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第1特集
日本郵政の深すぎる闇

ブラック企業よりもヤバい!自爆営業、横領、自殺……日本郵政のキケンな病理

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――今年も年賀状の販売が始まったが、新年の挨拶はメールやLINEで済ませようとしている読者も多いだろう。そんな時代にもかかわらず、日本郵便の社員がノルマ達成のために年賀状を自腹で買い取る“自爆営業”が近年取り沙汰されている。さらに、ヤバい話はそれだけではないようだ。民営化から7年がたった今、日本郵政グループの暗部をほじくり出したい。

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■郵便事業は、もはや”お荷物”
日本郵便
売上高:2兆7739億円(14年3月期)
純利益:329億円(同)
総資産:4兆8017億円(同)
社員数:約19万7000人
郵便事業、国際・国内物流事業を行うほか、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の窓口業務の代行、不動産業、物販業などを行う。「小さい郵便局で窓口に立つのは、だいたい非正規社員。正規社員は、外回りをしてかんぽ生命の営業するなどの仕事が多い。かんぽ生命は営業をがんばればがんばるほど成果が上がるけど、年賀状なんてがんばったところでたかが知れてるでしょ。会社は、郵便事業は切り離してほしいというのがホンネ」(日本郵便社員)

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■貯金残高はトップだけど……
ゆうちょ銀行
売上高:2兆763億円(14年3月期)
純利益:3546億円(同)
総資産:202兆5128億円(同)
社員数:約1万3000人
貯金や送金・決済などのサービスを提供。貯金残高は2000年の260兆円をピークに年々減
少。11年から微増し、13年は177兆円と国内トップを維持(2位の三菱UFJフィナンシャルグループは114兆円)。全銀協による「よりよい銀行づくりのためのアンケート2012年度」によると、口座保有率は、ゆうちょ銀行77.6%、都市銀行56.7%、地方銀行56.8%だが、最も利用する金融機関は、都市銀行32.1%、地方銀行28.3%、ゆうちょ銀行20.9%という結果に。

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■個人保険の契約数が急増
かんぽ生命保険
売上高:11兆2339億円(14年3月期)
純利益:634億円(同)
総資産:87兆8860億円(同)
社員数:約6800人
直営店(支店)のほか、代理店(郵便局)を通じて生命保険事業を行う。個人保険の保有契約数は、2010年度末の618万件から13年度末には1166.8万件と増加。かつて保険加入者のみを対象としていた宿泊施設「かんぽの宿」は、現在は日本郵政が運営しており誰でも利用できるが、そもそもは郵政OBの天下り先。民間のホテルからしてみたら、民業圧迫以外の何ものでもなかったという。株式上場に向け、不採算施設は売却や閉鎖などの処分を進めている。

(絵/カズモトトモミ)


 2007年10月に日本郵政公社が民営化され、持ち株会社である日本郵政株式会社と、その下に郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険の株式会社が発足。その後、大赤字の郵便事業を救済すべく、12年10月に郵便局株式会社と郵便事業株式会社が統合され、日本郵便株式会社に再編された。

 近年、携帯やメールの普及で郵便物数は減り、ネットでATM手数料や金利がおトクな銀行を選べるため、当然ゆうちょ銀行の貯金残高も減少。保険も競合他社があらゆる商品を販売し、「郵便局に行かなきゃ」という機会は少なくなった。

 特に悲惨なのは郵便事業。郵便物取り扱い件数は、02年には257億通あったが、民営化した07年には220億通、11年には191億通と大幅に減少した。13年3月期決算で4期ぶりに最終黒字に転じたが、それは大幅な賃金カットや人員削減などの成果だといわれている。

 去る10月30日には、15年用年賀はがきの販売が始まった。ほぼ前年並みの約34億枚の発行を見込んでいるが、実際の売り上げは30億枚にも達しないのではないかといわれている。かつて04年正月用の発行枚数は44億5900万枚だった。

 日本郵便は無料対話アプリ「LINE」と連携した年賀状サービスを開始したほか、ソニーデジタルネットワークアプリケーションズと連携し、スマートフォンでコードを読み取ると動画などが楽しめる年賀状も売り出しているが、それがどこまで年賀状回帰につながるかは不明だ。

 ジャーナリストの樫田秀樹氏は、著書『自爆営業』(ポプラ社)でその過酷な内情を暴いた。

「”自爆営業”は日本郵便で生まれた言葉。売り上げノルマを達成するために、日本郵便の社員が年賀状を金券ショップに持ち込み、安く売った分の差額に自腹を切る行為のことです。例えば、1000枚の年賀状を1枚43円でショップに売ると、4万3000円を手にしますが、局には5万2000円を納めるので9000円の”自爆”となる。売り上げノルマを達成できないと、叱責されたり心理的圧力をかけられたり、あげく人事評価が下がり賃金も減ってしまう。それなら自爆したほうがマシということです。年賀状以上に売り上げが厳しい『かもめ~る』や『ふるさと小包』に、10万円単位で自腹を切っている話も。現場社員だけでなく、非正規社員や管理職も同様です」

 ノルマは数百枚~1万枚とケースバイケース。局によっても状況はかなり異なり、世代によっても温度差があるようだ。日本郵便のある30代社員はこう話す。

「僕の周囲で自爆営業は減ってきています。会社がコンプライアンスの順守を徹底させようと、朝礼で自爆営業の禁止を周知しているので。とはいえ、完全になくなってはない。小さい郵便局だと、余り分をかぶるのは局長など役職者が多いですね。年賀状販売は営業実績が見えにくいので、20〜30代の社員はそれに自腹を切るのは馬鹿らしいと思っている」

 これに対し、前出の樫田氏はこう話す。

「『ウチの局では自爆営業はさせない』という根性のある局長もいますが、目標を達成できないと、局長が支社から呼び出されて『なぜ目標達成できないんだ』と叱責される。日本郵便広報部に問い合わせると、『弊社にはノルマはありません。あるのは目標です』『金券ショップに持ち込んだのがウチの社員か調査しましたが、確認できておりません』という回答。11年に国会で自爆営業やパワーハラスメントが取り上げられ、13年に菅義偉官房長官が全国の郵便局で無理なノルマ設定がないか、総務省に注視するよう指示したことを明らかにしましたが、何も変わっていません。メディアを通じて問題提起するしか変える方法はなさそうです」

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