――先だって行われた、AKB48の「第6回選抜総選挙」で1位を獲得した渡辺麻友を支えたのが中国のファンによる票だったと報じられたことは記憶に新しい。また、アイドルとヘヴィメタルの異色のジャンルミックスで人気を誇る「BABYMETAL」は、全米ビルボード総合チャートにランクインし快進撃を続けている。ジャニーズとEXILEは、日本の男性アイドルとして、この流れに乗ることができるのか?2つの集団の「輸出コンテンツ」としての可能性を考えていきたい。
かつて、日本全土を踊り狂わせ、世界にも進出したTKこと小室哲哉。そういえば、海外事業失敗で多額の借金が……。
ジャニーズとEXILEは、ともに歌とダンスのショービジネスをメインとする芸能集団である。メンバーが男性だけであることや、アメリカのブラック・ミュージックを参照していることなど、共通点も少なくない。しかし、最終的にアウトプットされるものからは、ずいぶんと違った印象を受ける。この、どことなく似ていて、しかしだいぶ異なるイメージをまとう2つの集団は、現在、日本の芸能全般において大きなシェアを占めている。
そんな日本では圧倒的な存在感を誇る彼らだが、世はグローバル社会……などと言われるはるか以前から、日本は、欧米はもとより、世界中のコンテンツを大量に輸入してきた。近年では、韓国からK-POPやドラマなどのコンテンツが輸入され、大いに消費されてきたのはご存じの通り。では翻って、同じアジアの一国である日本のジャニーズとEXILEは、海外に輸出するコンテンツとしてどのような可能性があり、どちらがより輸出コンテンツとして優れているのだろうか?
輸出に必要なのは「マッチョさ」と「物語」
そもそもジャニーズに関して言えば、すでにSMAPなどは台湾に多くのファンがいることで知られている。
「これを言うと身もふたもありませんが、ジャニーズに限らず、一般論としてアジアの国が経済成長し、豊かになっていくときに参照するのが、日本のカルチャーです。わかりやすい例として村上春樹の作品などは、経済成長した順に受容されていく流れがある」
そう語るのは、大谷能生・速水健朗との共著『ジャニ研!』(原書房)がある評論家の矢野利裕氏。つまり、「海外に売り出そう」という戦略とは無関係に、売れるべくして(勝手に)売れている側面がある、ということだ。となると、その人気がいつまで続くかはわからない。もし、今後もマーケットとして視野に入れていくのであれば、何らかの戦略的な仕掛けが必要になってくるかもしれない。
では、もうすでに足がかりもできているし、ジャニーズのほうにアドバンテージがある?と思うかもしれないが、視点を欧米にまで広げると、こんな見方もある。
「商品としての可能性を考える時、2つの軸で見ていく必要があります。ひとつは、コンテクスト性(背景にある物語)の有無や程度。もうひとつが、商品性のそのものの問題。この観点からいくと、ジャニーズはコンテクスト性が高すぎて、鑑賞の仕方が荒っぽい欧米の市場に馴染まないと思います」
こう語るのは、国際大学GLOCOM客員研究員で、コンテンツ産業や情報産業の研究を行う境 真良氏。