多くのIT系システム開発企業が「ビッグビジネス運用システム」だとして高価格で販売しているのは、実はひと昔前に「ビジネス・インテリジェンス」として販売されていたような、ただの顧客分析ツールにすぎなかったって……マジですかっ!?
『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』(講談社)
「ビッグデータ」というワードを、昨今最もビジネスに“活用”しているのが、一般企業向けにシステム開発をしたりハードウェアを供給したりしているITベンダー企業だろう。そこには、「ビッグデータ」をビジネスチャンスとみて、さまざまな商品をビッグデータにかこつけて売り込もうとしているITベンダーの思惑が見て取れる。
例えばNTTデータは、ビッグデータ関連の売り上げで15年度までに200億円を目指すとしている。さらに富士通は、13年度に1000億円、15年度には2000億円の売り上げを、日立も15年度に1600億円を目指すとしている。世界に目を転じると、米IBMでは15年にビッグデータ関連の売り上げが世界で200億ドル(約2兆円)に達する見込みだ。つまり、ビッグデータはそれだけ"売れる"見込みのあるビジネスというわけだ。
では、国内ITベンダーによるビッグデータビジネスの実態はどうなっているのだろうか?「本当にビッグデータに強いのは、日本ではNTTデータでしょう。それ以外は横並びと言っていいと思います」と話すのは、大手の外資系ITベンダー元社員のA氏。
「NTTデータは以前から、米ヤフーがグーグルの発表した論文を参考にして開発した、Hadoopというビッグデータを処理するためのオープンソースソフトの活用に取り組んでいましたから。富士通や日立なども同様に取り組んではいますが、あまり目立った成果は出せていない印象ですね」(A氏)
富士通や日立が先述したような景気のよい売り上げ目標を立てる一方で、1ケタ少ない数字のNTTデータがビッグデータに強いというのは意外だ。だが、実はそこにはトリックがあるという。
「多くのITベンダーが売っているシステムは、実はいわゆるビッグデータとは似て非なるもの。ビッグデータはひとつのコンピュータではとても扱えないほどの巨大データ。その点、一般的な企業では、会計や仕入れ、販売などのデータをすべて合わせても、今のパソコンなら1台で収まってしまう。だから、本当の意味での『ビッグデータ処理システム』など、そうした企業には必要ないんです」(A氏)
にもかかわらず、多くの企業向けシステムのうたい文句には「ビッグデータ」という言葉が躍っている。実はこれ、イメージを意識したただのキャッチコピーにすぎないのだという。
「今ではビッグデータという言葉が、単純にデータを分析してビジネスに活用するという程度の意味合いになっています。しかしそういったシステムは以前からあり、ちょっと前ならBI(ビジネス・インテリジェンス)と呼ばれていました。今ビッグデータとして売られているシステムの大半は、それとまったく同じモノです」(A氏)
例えば小売業者ならば、売り上げ管理と経理処理、在庫と発注管理、それに顧客管理などのシステムが必要となろう。そうしたデータを対象としたBIは、IBMやドイツのSAPといった外資系ITベンダーが得意とするところ。よって、いわば“羊頭狗肉”のビッグデータビジネスでも、そうした外資系企業が強いのだという。一方で、日本のベンダーもビッグデータを売り物にしているが、あまりパッとはしないのだとか。