――最近では『バイオハザード』おじさんとしても知られるベテランフリーアナ・鈴木史朗氏。実は男性アナウンサーの採用でルックスが重視されるようになった流れには、彼が一枚かんでいた──!?
男性アナウンサーに注目が集まっていることは、とても喜ばしいことだと思います。見た目が良くて人気が出れば、視聴率アップにもつながりますから。僕が新人の時代(1960年代)は、男性アナは女性アナの陰に隠れている地味な存在でしたよ。女性の場合は募集要項に“容姿端麗”と書いてあったのを覚えていますけど、男性は“顔がついていればいい”という感じでした。ラジオ全盛の時代だったせいもありますが、“男は声がきれいで誠実で、信頼感があればいい”“縁の下の力持ちであれ”とされていたんです。逆に、顔が良くて人気が出ると嫌われました。特にTBSはスターアナシステムを取っていなかったものですから、下手に人気が出ないほうがよろしいと。それはテレビが普及しても変わりませんでしたね。
実際に僕が経験したこととしては、『TBS 歌のグランプリ』という歌番組があったんですが、制作部の部長がですね、アナウンス部の反対を押し切って、僕をその番組で使いたいとおっしゃったんです。それで出演しましたところ、すごく人気が出た。そしたら、アナウンス部の方針に逆らって人気が出てしまったということで、ほどなく制作部に異動という辞令が下りました。ちょうど入社10年目前後で、これからという時だったのですが、出る杭は打たれるといいますか……。それからアナウンス業務とは関係ない部署に何度か異動を繰り返し、アナウンサーとしてカムバックするまでに10年以上かかりました。僕は局アナとしては、けっこう不遇だったのです(笑)。