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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第1回

マス機能を失ったテレビに変わってマスを作り出すネットの可能性

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

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『MEDIA MAKERS—社会が動く「影響力」の正体』(宣伝会議)

 通信・放送業界を支援するコンサルタント・クロサカタツヤが、インターネットやテレビ業界などで、新たなマーケットを発掘・発展させている業界のトップリーダーを招き対論する、この連載。第1回は、リクルートのフリーペーパー「R25」から現在のLINEに至るまで、新しいメディアを提案し続けるLINE株式会社の田端信太郎氏に、新メディアを創り上げる嗅覚と崩壊する既存の“マス”の概念について聞いた。

クロサカタツヤ(以下、クロサカ) 田端さんは、リクルートの「R25」に始まり、今手がけるLINEに至るまでに、伝統的なマスと、対極にあるネットのどちらも知っています。その立場から、今のメディア環境をどのように見ていますか?

田端信太郎(以下、田端) メディアには、コミュニティを作る役割があります。例えば「社会人なら日経」というキャッチコピーは、日経新聞は専門性があり、サラリーマンというトライブ【1】を示すバッヂになる。その点においてテレビは絶望的で、同じ番組を見ているだけでは相手との関係が深まらないため、もはや広告を入れるための枠でしかなくなっています。私自身、中高生の頃はテレビ局で働くことにあこがれていましたが、今はテレビ局の社員をうらやましいとは思わない。

クロサカ テレビ業界が厳しいことは皆が理解している。でも、中にいると業界の枠組みでしか判断できません。いくら『半沢直樹』(TBS)がヒットして話題を呼んでも、ネットなど多数のコンテンツが溢れてる中では競争が激し過ぎて、テレビで回収されるトライブが出てくる可能性は小さい。最近よくある、コンテンツのマルチメディア展開ブームは、その裏返しです。

田端 “社会人の常識”の基準を、かつては新聞が決めていた。今はそれが『ZIP!』(日本テレビ)や「ヤフトピ」です。だからテレビを見る意味はゼロにならない。でも、今のテレビ業界は死に至る病に蝕まれている。例えば、『ワールドビジネスサテライト』【2】なら、独自サイトで利益を上げるビジネスプランが可能です。でもテレビ局は番組単位での収益を見ていないため、番組外で稼いでいくメリットがなく、そういう発想もありません。

クロサカ なぜできないのでしょうか?

田端「組織のDNA」じゃないでしょうか。例えばフジテレビの福原伸治さん【3】と話すと、あの方は今の状況を、とてもよく理解している。でも、テレビ局の組織全体の話になると絶望的に変えられない空気になる。

クロサカ 何か外的なショックで壊れないと、たぶん変わらないでしょうね。

田端 雑誌のほうが経済的に厳しいので、中の人に「変えるしかない」という空気がある。前職のコンデナスト(「GQ JAPAN」などを発行する出版社)時代に「リーマンショックが雑誌業界にとって、不可逆な外的ショックだった」と痛感しました。

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