――現在「イブニング」で連載中の『レッド』の作者、山本直樹がエロマンガ家であることは、多くの人が知るところだろう。しかし、昨今は、過去のエロマンガ家としての活動を隠して、一般誌でヒット作を描く作家は珍しくない。そんな、成人コミックと一般コミックの狭間で揺れる作家たちの思いと、規制が厳しくなる昨今におけるエロマンガのタブーを山本氏に聞いた。
(写真/磯部昭子 A/M)
現在「イブニング」(講談社)で、連合赤軍事件を題材にした『レッド』【1】を連載中の山本直樹。同作で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞する作家でありながら、森山塔・塔山森名義で成人向けマンガを執筆し、1991年に『BLUE』【2】で東京都条例初の有害コミック指定を受け、2008年には『堀田』【3】3巻が同じく有害コミックに指定されるなど、タブーに挑むような作風でも多くの支持を集めている。そんな山本氏は、どんどん規制が厳しくなる一方のマンガ界の現状をどのように見ているのだろうか――。
――やはり、作品によって山本直樹と森山塔の名義の使い分けを?
山本直樹(以下、山本) ペンネームを使い分けてたほうがかっこいいかなって思ってね(笑)。「ピンクハウス」(日本出版社)っていう自販機本から森山塔でデビューして、すぐに「ジャストコミック」(光文社)でも山本直樹名義で描き始めたので、ほとんど同時進行だったんですよ。そのうち、忙しくなって使い分けなくなっちゃったし。今は、山本名義で人格統一してます。
――山本先生以外にも、もともとエロマンガを描いていて、青年誌や少年誌に連載を持つマンガ家は多いですよね。『お慕い申し上げます』の朔ユキ蔵さんや、『めだかボックス』(共に集英社)の暁月あきらさんとか。『花のズボラ飯』(秋田書店)の水沢悦子(うさくん)さん、『食戟のソーマ』(集英社)の佐伯俊(tosh)さんのように、元エロマンガ家だということを公にしていない人もいますが、山本先生はそこはオープンですよね。
山本 出自を隠しても、結局今の時代だったらすぐにバレるでしょう。さすがに「週刊少年ジャンプ」(集英社)の作家になるなら隠そうかと思うんだろうけど、僕の場合青年誌だから、まったく抵抗がないし、出版社に名前を隠せと言われたこともないですよ。