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【premium限定】女子アナ出身は女優になれない!

『あまちゃん』人気で八木亜希子に注目が集まるも、女子アナが女優に向かない本当の理由

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『私たちがアナウンサーだったころ』(フジテレビ出版)

 元フジテレビアナウンサーの八木亜希子が、大ヒット中のドラマ『あまちゃん』(NHK)でヒロイン・アキの友人であるユイの母親役を好演し、注目を集めている。しかし、彼女のようにフリーへ転身後に女優として成功した例は意外に少ない。ここ10年のブームによって芸能人のボーダレス化が顕著でありながら、女優という道に進む女子アナがいないのはなぜなのだろうか?

 まず、元アナウンサーという経歴の持ち主で、大女優と呼ばれているのはたったひとりと言ってよい。1962年にNHKを退社してフリーになった野際陽子がその人であり、TBS系の『赤いダイヤ』(63年)や『キイハンター』(68年)の演技で注目を集めたのを皮切りに、TBS系の『ずっとあなたが好きだった』(92年)での冬彦さんの母役で大ブレイクを果たしている。

 彼女のほかにもうひとり挙げるとすれば、85年にフジを退社した山村美智が女優に転身後、舞台方面の才能を開花させて、オフ・ブロードウェイ公演を成功させた。それに続くのが先の八木亜希子であり、彼女もまた、2000年にフジを退社後、映画『みんなのいえ』(01年)のヒロイン役で、『日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。その後は大きな役に恵まれなかったが、今年の『あまちゃん』で確固たるポジションを築いたといえるだろう。

 元長野朝日放送の斎藤陽子や『やじうまプラス』(テレビ朝日系)のお天気キャスターで人気を集めた甲斐まり恵など、前述の3名以外で女優業を行う元アナウンサーもいるが、仕事ぶりを見る限り、いずれも小粒感は否めない。そのほかのフリーアナたちは、キャスターや司会業よりタレント業にウェイトを置くことはあっても、女優としての仕事すらないことがほとんどなのだ。
 
 それでは現役の局アナはどうなのかといえば、ドラマ出演に関するニュースは度々報じられている。しかし、それは主演や準レギュラークラスではなく、あくまで自社ドラマの話題作りに利用される添え物的な扱いだ。

 最も多い事例は、つい先日もテレ朝の久富慶子アナが『警視庁捜査一課9係』でリポーター役を務めたように、アナウンサーやリポーター役という本来の彼女たちの職業を演じる形式。ほかにも、フジの大島由香里アナが『SP 警視庁警備部警護課第四係』(07年)でニュースキャスター役を務めたり、『名探偵の掟』(09年/テレビ朝日系)のアナウンサー役で大木優紀アナ、堂真理子アナ、前田有紀アナ(現在は退社)など6名が出演するなど、この例は各局とも枚挙に暇がない。

 フジの『dinner』(13年)にカトパンが本人役で出演したり、『バツ彼』(04年)にTBS時代の小林麻耶アナが主演の元カノ役を演じるなど、アナウンサー役以外での出演事例もあるが、そのどれもが本筋に絡まないチョイ役程度。過去に一度だけ、ネット配信の『フォーチュン・バナナ』(04年)というオムニバスドラマで、フジの千野志麻アナ、TBSの竹内由恵アナ、テレ朝の河野明子アナがそれぞれ主演を務めたことがある。しかし、こちらも当時隆盛していた“女子アナブーム”に便乗したお遊び的な企画であり、この後にこの手のドラマが制作されることはなかった。

 一方で、フジ系の『女子アナ。』(01年)やテレ東の『女子アナ一直線』(07年)という「女子アナ」をテーマにしたドラマも放送されており、そこに局アナを出演させても良さそうだが、チョイ役ですら出ていない。おそらくフィクションであるドラマの主題にかかわる役柄に、実在のアナウンサーを出演させることの違和感を嫌ったのだろう。

 つまり、在局中の女子アナが映画やドラマ業界に深くかかわることは不可能であり、演技の素養を磨くということも難しいのだ。

 これらを踏まえると、局アナがフリーになって女優に転身することは非常に困難だと推察できる。局アナ時代は演技に役立つ能力を伸ばせず、フリーになったときはアラサーという年齢。一から女優としてステップアップしていかなければならないが、すでにある程度の知名度を得ているため、『あまちゃん』の能年玲奈のような新鮮さは絶無である。

 もちろん芸能界には遅咲きの役者もいないわけではないが、それも若い頃から地道に演技の道を志してきた人間がほとんどだ。ちなみに、前述した野際陽子や八木亜希子は、フリーになって1、2年のうちに演技の仕事で評価を受けているのだが、これはもはや、本人の持って生まれた素質と運によるところが大きく、努力の及ぶ範囲ではない。となれば、これまで培ってきたアナウンス技術でキャスターや司会業をメインにこなすほうがリスクははるかに少なく、ギャラの高いCM出演でも決まれば、苦労して女優業に手を出す必要もない。そんな背景もあり、元アナウンサーの女優という存在が生まれにくくなっているのだ。

 また、キャスター業への執着という面もある。フリーに転向するような人気アナはバラエティ番組でアイドルまがいの役割を求められることが多く、アナウンサーであるはずの自分とのギャップに悩むこともしばしば。それは、女子アナがフリーに転向する理由の常套句が「報道の仕事がしたい」であることからも想像できる。そのことから、キャスターやイベント司会など、あくまでインテリジェンスを感じさせる仕事に傾倒していくのだろう。

 これらのさまざまな理由から、女子アナにとって女優という職業の門戸は狭く、これからも広がることは難しそうだ。

(女子アナウオッチャー・百園雷太)

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