──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか……気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。
第19回テーマ「再分配と世代間格差の障壁」
[今月の副読本]
『財政危機と社会保障』
鈴木 亘/講談社現代新書(10年)/798円
史上最悪の債務を抱えた日本の財政が、社会保障にもたらす影響を浮き彫りにした1冊。少子高齢化において、「日本の社会保障のあるべき姿」を、詳細かつ膨大なデータを用いて解説してくれる。
格差問題といえば、これまでは正社員と非正社員の格差だとか、男女のあいだの雇用機会の格差などがよく論じられてきました。しかし、世代間の格差も決して無視することのできない問題です。たとえば経済学者の鈴木亘は『財政危機と社会保障』のなかで次のような試算をしています。