──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか……気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。
第18回テーマ「高度経済成長が生むバブルのツケ」
[今月の副読本] 『国家債務危機』 ジャック・アタリ著/作品社(11年)/2310円
弱冠38歳で、フランスのミッテラン政権大統領特別補佐官を務めた著者が、債務問題から経済の展望を大胆に予測する。ユーロ危機や1000兆円の債務を抱えた日本の将来を、経済成長とともに紐解いていく。
欧州の債務危機が世界を揺るがせています。ギリシャだけでなく、イタリアやスペイン、ポルトガルの債務状況も非常に危ないといわれています。今年10月には、フランスとベルギーに拠点をおく大手金融機関のデクシアが破綻しました。ギリシャなどが借金のために発行した国債をもちすぎていたためです。同じような金融機関の破綻は今後も続くかもしれません。もしそうなれば、金融機関同士が、貸し倒れを避けて、おたがいに資金を融通しあわなくなり、2008年のような金融危機がふたたび起こることだってありえなくはないでしょう。