問題を個人化させずに、いかに解決フェーズに導くか
『POSSE vol.10 〈シューカツ〉は、終わらない?』
荻上 お2人は、「解雇規制の緩和」によって労働市場の流動性を高めること、「再チャレンジを容易にするセーフティネットの整備」によってその際の痛みを緩和する、という議論についてはどう思われますか?
坂倉 現在盛んに議論されている解雇規制緩和論は、労働現場の実情を軽視したものばかりです。セーフティネットはもちろん必要です。しかし、セーフティネットがあれば積極的な退職ができて、ブラック企業が淘汰されるというよくある提案は、前述のような、若者が容易には声を上げられない実態からすると楽観的すぎます。こうした議論は、職場の理不尽に対して個々人がひとりで合理的に判断し、行動することができるはずだという「強い個人」モデルに依拠しているのではないでしょうか。それだけでは、結局「できない自分が悪い」という問題の個人化につながりかねない。