【前編はこちら】
中国の経済的台頭と日米への影響力
神保 2010年の中国のGDPが日本を抜いて世界第2位になることが確実になり、2030年だかにはアメリカに追いついて世界一になるといった試算も散見されます。アメリカは第一次大戦直後の1917年にGDPで世界一の国になり、それ以降、世界の覇権を握ってきました。しかし、ここにきて中国の台頭と、それに伴う相対的なアメリカの凋落は、アメリカの外交政策にどう影響するのか。特に日本は地政学上、きわめて中国に近く、安全保障は完全にアメリカに依存していることから、この先、米中関係がどうなるかは、日本にとって死活問題になり得るテーマですが、渡辺さんはどう見ていますか?
渡辺 アメリカにとって中国は、かつてのソ連とは違い、不信もありながら、明らかに相互依存の関係にあります。これは日中関係も同じですが、日本における対中言説とアメリカにおけるそれを比較すると、アメリカには中国国内の経済格差など、不安要素を重視する言説が根強くあります。先の米中首脳会談は互いに実利を取った形で、イデオロギーに深く踏み込むことはありませんでした。
しかしながら、アメリカにとって理念的に相いれない部分も大きい中国に対して、「ビジネスとはいえ、堅固な協力関係を築くのはおかしい」という声もある。アメリカ国内で、それが今後どこまで表に出てくるか、ということには注目すべきですね。