「パンツの上にガードルを履いているのが、もうもどかしくなっていて、きっちりと下半身をおさえている牡蠣の殻のように頑丈なものを取り払いたくてたまらなくなっていた」
まるで官能小説を思わせる文体。伊佐山ひろ子の新作『海と川の匂い』(リトルモア刊)は、少女時代への無垢なノスタルジーと、女性の生々しいエロスが入り交じった純文学だ。しかし、彼女の本業は小説家ではなく、女優。ドラマ『北の国から'84夏』で、あの黒板五郎(田中邦衛)に激怒されるラーメン屋の店員を演じるなど、バイプレーヤーとしても名高い。今作が14年ぶりの著作となる彼女、その創作への意欲と秘密とは?
「小説は全部自分の経験に基づいて書いています。プロットなんかも特に作らず書き進めますね。依頼があれば書くという感じで『書きたい』と思って書くわけではないんですよ。表現欲求ですか? ......あんまりないですね」と、なんとも自然体な伊佐山さん。こんな飾らない姿勢から、独特の「伊佐山エロス」が滲み出てくるのだろう。
ところで、伊佐山さんといえば、1972年「日活ロマンポルノ」でデビューを飾ったことでも有名。再評価の気運も高く、海外での評価も高まる日活ロマンポルノ。当時の現場の様子って、どのようなものだったんでしょう?