サイゾーpremium  > 連載  > 宇野常寛の批評のブルーオーシャン  > オールド・メディアとどう付き合うか
連載
宇野常寛の批評のブルーオーシャン 第2回

オールド・メディアとどう付き合うか

+お気に入りに追加

 インディーズで雑誌をやっていたりするせいか、電子書籍について意見を求められることが多い。そのたびに微妙な気分になる。そりゃあ紙の本は早晩大きくその存在理由を問われることになるだろうし、iPadあたりの登場はもしかしたら新しい文学を生むかもしれない。パソコンの普及がノベルゲームの進化をもたらし、ケータイサイトの充実がケータイ小説を生んだように、環境の変化はときに人間の想像力それ自体を変化させる。

1006_uno.jpg
宇野氏が編集協力も務める「思想地図vol.4」

 だが、僕がちょっとうんざりしているのは、多くの業界人がこの電子書籍化みたいな「大きな問題」をある種のイイワケにしていることだ。そりゃあ、週刊少年誌の部数が落ちているのは若者の「本離れ」の一環で、その背景にはインターネットと携帯電話、つまりコミュニケーションに時間とお金を取られてコンテンツ(本やCD)にこれまで割かれていたコストを侵食している、くらいの分析もすぐにできる。これはとても重要な問題で、1冊本が書けるくらいだし、その結果、現代文化が大きく変わりつつあるのも確かだ。と、いうか僕の仕事はその変化を世に知らしめることがかなりの割合を占めている(気になる人は「思想地図」vol.4を読んでほしい)。しかし、批評家としてではなく編集者としての僕が考えているのは、もう少し別のことだ。つまり、確かに週刊誌やマンガ雑誌が売れなくなったり、広告モデルそのものが成立しなくなったのは「社会の大きな変化」だろう。しかし、5000部出れば採算が取れるような高い本(たとえば純文学のハードカバーや、サブカル本)が売れなくて赤字で愚痴をこぼすのは、「出版不況」のせいでもなければ「ネットワーク化」のせいでもない。それを「大きな問題」のせいにするのは、目の前のリアルな問題から目をそらす行為だ。そういうのって、単に送り手の努力と能力不足だと思う。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年5月号

新・ニッポンの論点

新・ニッポンの論点

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【マルサの女】名取くるみ
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【Lee Seou】八面玲瓏として輝く物言う花
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【雪村花鈴&山田かな】CYZOデジタル写真集シリーズ
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ