ソマリランドのキャンプに暮らす、姉妹と
思われる子供たち。97%の女性がFGMを経験するこの国で、FGMをしない女子は結婚できないといわれる。(撮影/佐々木康)
「難民鎖国」と揶揄されることもあるほど閉鎖的な、日本の難民認定制度。翻って難民に寛容な政策で知られるヨーロッパでは今、「女性器切除(Female Genital Mutilation/以下、FGM)」を逃れてきた、主にアフリカ出身の人々を難民として受け入れるべきかどうかが議論となっている。
このFGMとは、読んで字のごとく、女性の外性器を切り落としてしまう行為のことを指す。アフリカや中東などで2000年以上にわたって続いてきた慣習で、たいていは生後数週間から10歳前後までの女子に対して行われる。世界保健機関(WHO)によれば、全世界で1億3000万人以上もの女性が、このFGMを経験しているというのだ。
米政府は1996年以降、FGMの脅威を逃れてきた女性を難民として受け入れるという立場を取ってきた。だがヨーロッパの大部分の国々では、FGMの行為そのものは違法とされているものの、難民認定の十分条件とはなっていないのだ。
筆者は今年2月、アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使に同行し、ソマリア北西部の都市ハルゲイサでこの問題を取材した(ここは国際的に承認されていないソマリランドという"自治国"が実効支配している)。ソマリアは女性の実に97%がFGMを経験するという、世界で最も色濃くこの慣習が残る地域となっている。