キャッチコピーは「あえばハッピー!!」。
大方の予想通り、民主党の圧勝で幕を閉じた衆院選。さまざまな話題が取り上げられる中、幸福実現党の動向も大いに注目を集めた。同党元党首でもあり、現同党宣伝局長の饗庭直道氏に選挙戦を振り返ってもらった。
──5月の立党会見のときよりも、スマートになられたような印象を受けますが、痩せたのは精神的な負担もあったのでしょうか? ほかの政党から嫌がらせがあったとか(笑)。
饗庭 公明党のことを言わせたいんですか(笑)。そんなことはないですよ。ただ、誰がやったかわからないのですが、ポスターが破られていたり、汚物が事務所の前に置いてあったりはしましたけどね。 それよりも、選挙のノウハウがないというのは苦労しましたね。例えば、二連ポスターは、公示日前に全部はがさないといけないと思っていました。でも、実際にはがしたのは私たちだけで、ほかはそのままだったり(笑)。
──党首交代後、出馬を決めた東京12区は、太田昭宏氏が地盤を固める公明党の牙城ともいうべき選挙区でした。大川隆法総裁の発言で、「宗教のイメージを悪くしたのは公明党、創価学会である」とありましたけど、公明党の支持基盤の強い地域では、風当たりは相当強かったのではないですか?
幸福実現党
今年5月に結党した、宗教法人「幸福の科学」を支持母体とする政党。先の衆院選では全選挙区で300人を超える候補者を擁立させるも、結果、獲得できたのはゼロ議席。ちなみに選挙費用は、幸福の科学から借り入れたものだという。
饗庭 名刺を渡そうとすると、こちらを睨むだけで、受け取ろうとしない人はいましたね。でも、反公明、反創価の方も多かったのは事実です。そんな方の多くは宗教=創価学会と見ていて、「宗教はごめんだ」と。ほかにも「公明党にずいぶん陰険なこともされた。宗教には悪い印象を持っている」という声もあって、今までこの数十年、いろいろとあったんだなと思いましたね。弱者の側に立つ公明党の政策も、住民の方からは「怠け者をいっぱい作ってしまった」ということを聞きました。「長年、一生懸命、公明党を応援してきたんだけども、働かないでお金だけもらって、生活保護を受けて、都営住宅などに住んで生活できるようにさせる怠け者の政党なんだ。なんとかしてくれ」という声も耳にしました。
──それでは、幸福実現党のマニフェストについてお聞きします。3本柱のひとつ、北朝鮮のミサイル問題を繰り返し訴えていた印象を受けます。有権者の反応はいかがでしたか?
饗庭 実際に街頭に立つと、「北朝鮮の問題は頼みますよ」とか、「金正日をやっちゃってください」という声もありました。特に受けが良かったのは若い男性ですね。北朝鮮は、アメリカの独立記念日にミサイル実験をするような威圧的な国です。原爆記念日、終戦記念日などに強行してくる可能性もないとは言えません。私どもの手前みそだったら申し訳ないんですけど、選挙期間の前後にそういったことがなかったのは、我々が声高に北朝鮮のやり方を批判したことが奏功したと勝手に考えています。
──つまり、金正日をビビらせたと。
饗庭 これまでの対北政策は、軟弱な外交そのものだったじゃないですか。誰も何も言わないから、北朝鮮もやりたい放題だったんです。今回、我々の「目には目を」という政党からの声は、初めてのことだと思います
42歳には見えないエネルギッシュな饗庭氏。好きなアーティストは、氣志團という側面も。
──国防の問題は、民主党を中心とした連立与党の間でも政策が揺れています。もし政権を取った際の具体策を聞かせてください。
饗庭 当然、アメリカとの安保条約が基本になってきますし、さらに強化する必要があるでしょう。しかし、目指すのは憲法を改正し、自衛隊法を変えることです。今よりも軍隊に近い自衛隊にする必要があります。そうしないと、北朝鮮のような国を相手に緊急対応は取れません。 選挙中におかしいなと思ったのは、自民党が投票日直前に、「とにかくポイントは2つです。景気の回復と国家の安全」と主張していたことですね。いったい、どこの政党の主張だよと(笑)。まあ、(幸福実現党が主張し続けていたことで)他党の政策にも影響を与えたという意味でも、間違ってはいなかったのかなと思います。我々の主張は、本来の保守そのものなんです。
──今回の選挙は、保守に対する逆風が強かったのではないかと思います。結果について、どのような見解をお持ちですか?
饗庭 議席を獲得することができなかったのは残念です。比例と小選挙区の得票数を集計してみたんですが、比例区で約46万票、小選挙区では約107万票でした。政党要件を満たすには(比例、小選挙区いずれかで)140万票が必要でしたから、もう少しだったなあと。しかし、100万の壁を越えることができたということは、とても大きな意味を持つと思います。 発足当初は「オウムとどこが違うの?」と言われ、私たちをカルトと見られる方もいました。しかし、100万票の壁を越えたということは、見方としての「カルトの壁」を越えたと思っています。
──(1100万人といわれる)幸福の科学の信者の数を考えると、得票数が少ない気がするのですが。
饗庭 それは、信者さんがほかの政党の中にもいることが影響しているんです。政党を問わず、国会議員の中に100名の信者がいたこともあります。今回の選挙ではうちが候補者を出したことによって、立候補者3名が信者という選挙区もありましたが、候補者だけでなく、支援者たちもかわいそうでした。「今までずっと応援している人がいるのにどうしよう」という信者さんがたくさんいたんです。中には、信仰心はあっても、他党の後援会長を務めているという方もいました。
──信者さんの中には、あまり政治に傾倒していくことを、よく思わない人もいるのではないですか?
饗庭 幸福の科学の基本教義には、限りなく自分の内側、心を探究するという姿勢と、世直し運動をし、広宣流布をしていくという両面があるんです。1986年の発足当初から大川総裁も教育改革、経済改革、政治改革ということを言っていました。ですから、信者の皆さんもそういった違和感などはなかったと思います。私自身も、学生時代に幸福の科学は政治改革をやるんだと、わかったから入信を決めたんです。20年たってようやく、始まったんだなという印象です。
──最後に、大川総裁は選挙結果に落ち込んでいたりしないのですか?
饗庭 めちゃくちゃ元気ですね。落ち込んでいたら、どうしようと思ったのですが(笑)。政党要件まであと一歩という次が見える結果でしたから、ぜひ、マスコミの方にもウオッチしていただいて、来年の参院選も見ていただければと思います。
(構成/水口真介)
幸福実現党の党首交代
饗庭氏を党首とし、結党宣言を行った幸福実現党だが、党首をめぐっては紆余屈曲があった。6月4日には、饗庭氏から大川きょう子氏へ交代、7月22日には幸福の科学大川隆法総裁が党総裁に就任、同29日には、きょう子氏が宣伝局長となり、事実上、党首の役職は消滅。今回取材に応じていただいた饗庭氏は、大川総裁の秘書、幸福の科学常任理事を経て、現職。