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第1特集
文壇の貴公子より、新宿鮫のほうがス・テ・キ

「寝たら原稿くれますか?」女性編集者が選ぶ"抱かれたい作家」【1】

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──ミステリー小説のイケメン探偵、純文学に登場する愛すべきダメ男……。小説の中の男たちはかっこいい。でも、それを書く作家たちは、はたして……? というわけで、人気男性作家を編集者たちが勝手にジャッジ! 顔よし、人柄よし、才能よしの、抱かれたい作家No・1は誰の手に!?

[座談会出席者]
A…書籍編集者・30代男性。津村記久子はかわいいと思う。
B…書籍編集者・20代女性。好きな男のタイプは野坂昭如。
C…文芸誌編集者・30代女性。好きな男のタイプは穂村弘。

A 「女性編集者が抱かれたい作家」ってテーマなんだけど、そもそも作家に抱かれたい女性編集者なんかいるのかな?(笑)

B いち読者だった頃は作品と作家を重ね合わせて、「あの人はきっとかっこいい」とかって思い込んでたけど、仕事となると、町田康だの島田雅彦だの、幻滅の連続です(苦笑)。

C オジサンばっかりだしね。私は最近の作家なら、伊坂幸太郎がかわいくて萌えるなぁ。口べたで、モゴモゴしながら「僕、ほんとにしゃべるの苦手なんですよ」って。編集者にも優しくて、『ゴールデンスランバー』で本屋大賞取ったり直木賞候補になったり、次々に作品が映画化されるような売れっ子なのに、全然偉そうにしないところが好感持てる。

B 人当たりもいいから編集者を選ばないし、イケメンかと言われれば違うと思うけど(笑)、私たちから見たら素敵な作家ですよね。多作だし、出せば売れるし……。

A 逆に、「イケメンだけど仕事はしづらい作家」って言ったら、町田さんかな。気難しいので有名だし。

B 町田さんは合わない人が多くて、担当できる人間が限られちゃうんです。ごく短期間に、担当編集者がころころ替わったりしますから。

C 文芸の編集者が作家に気を使うのは当たり前だけど、町田さんの場合、「やり取りひとつにもほかの人の倍は気を使う」と聞くよ。『宿屋めぐり』みたいな長編になると、長く付き合えないとものにできないし、大変だろうなぁ。でも作品の評価は高いから、書き下ろしもらえるんだったら、抱かれてもいいかも(笑)。

A 原稿に朱を入れたりは、そうそうできないけどね。町田さんに限らず、編集者が手を入れると、平易な文章に直してしまいがちで、純文系を担当する際はそこが難しい。

B そうですね。そういうときこそ付き合いの長さとか、関係の深さが問われます。「これは言ってもいい、この指摘はダメ」っていう取捨選択ができないといけない。一言一句変えたくないっていう人も多いから。

C そのあたりは、エンタメ系の作家さんはわりと楽かも。渡辺淳一先生の小説で、ときどき女性の描写がおかしいことがあって。女性の目から見ると「その服の組み合わせは、『清楚な女性』には見えない!」っていうような洋服の説明があったりする。そういうときは「先生、これはちょっとないと思います」って言っちゃうよ。そうすると「あ、そうなんだー」って、すぐ直してくれる。

A まさに『鈍感力』(笑)。渡辺さんは、世間に浸透してるイメージを本当に裏切らないよね。女の子に優しくて、おしゃれで人当たりが良くて、そして銀座を豪遊してる(笑)。

ルックスはどうでもよし! 〆切を守る男がいい男

A "文壇の貴公子"島田雅彦は? 『徒然王子』を完結させて、作家としてもまた脂が乗ってきたね。

C 私は島田さんには抱かれたくないな……。というか、できれば担当もしたくない。酒癖が悪いのが、女性編集者の間で有名なんだよね。

B 酔うと絡み方が良くないって話は聞きますね。

C 石田衣良さんも、女性編集者にちょっかいを出すって聞くよ。それにしても、彼はこのテの話題になると必ず名前が挙がるね(笑)。

A バブリー男が年下の女の子とのセックスにハマっちゃう小説『夜の桃』が発売されたときも、実話なんじゃないかって噂になったしね。でも彼は売れっ子だけに、一度に複数〆切を抱えてるから、とにかく原稿が遅い! どんなにかっこよくても、〆切を守ってくれない人は、それだけで魅力が半減してしまう。

B 結局、仕事ありきのお付き合いですからね。ルックスなんか、正直どうでもいい。時間を守るとか、きちんとレスポンスをしてくれるっていうほうが"いい男"の条件ですよ。

C じゃあ、Bさんが仕事抜きで付き合ってみたいと思うのは誰なの?

B えぇ!?……エンタメ業界の"ドン"大沢在昌さんかな。推理作家協会の会長を務めたり、宮部みゆき、京極夏彦とユニットを組んだり業界仕事もやり手だし、注目されるのもお好きだし、トークも巧み。地味な翻訳ミステリーの帯文句や推薦文も、お願いするとすぐ書いてくれて、本当にミステリーを愛してるんだな、という感じがする。『新宿鮫』など自身の作品イメージからブレがなくて、本当に「大人の男」なんですよ。

A 北方謙三じゃダメなの? 『水滸伝』から『楊令伝』で、ますます絶好調じゃない。もしくは、推理作家協会新会長の東野圭吾。『容疑者Xの献身』はじめ、売れまくりだよ。

C 北方さんは、ドンというより長老でしょ。東野さんは、大沢さんほどとっつきやすくない。確かに、大沢さんくらい雲の上の存在じゃないと、若い女性編集者がミーハー的にキャーキャー言うことってないかもしれないな。お互いドライになってるんだろうね。接待とか付き合いで、作家さんと飲みに行くこともないし。こちら側の事情として、夜の接待費が経費で落ちないのも理由だけど。

B そうですね。本が売れない今だから、作家さんに腐らずに書き続けてもらうためにも、なるべく親しく励ましたいとは思いますけど……。

A だからといって、寝たくはないってことなんだ(笑)。

(編集部)

■わざとなの? 本気なの? イケメン気取りはお手の物

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石田衣良(49)

1960年、東京都生まれ。97年『池袋ウエストゲートパーク』でデビュー。同作がドラマ化されてヒットし、一躍人気作家に。03年、『4TEEN』(新潮社)で直木賞受賞。作品に「株式投資」「就活」「派遣労働」など、その時折のニュースを取り入れ、ときに「ミーハー」と揶揄される。近年の作家としては珍しくテレビコメンテーターを務めたり、文芸以外のテーマでもメディアに多く登場している。


【1】『夜の桃』(新潮社/1680円)

ドイツ車、イタリア製スーツ、スイス時計......そのすべてを虚しく思わせるほど狂おしい恋に落ちた男の、苦しみと悦楽を丹念に描く。このご時勢にバブリーなこの男、著者自身がモデルでは? と憶測を呼んだが、真実は薮の中。


■ロシア語も喋れちゃう! インテリ貴公子

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島田雅彦(48)

1961年、東京都生まれ。83年『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー。同作が芥川賞候補になり、その後も計6回ノミネートされるが、すべて落選。作品は、自身の趣味であるオペラやクラシック音楽を取り入れたものから、フランシスコ・ザビエルの生涯を描くものまで幅広い。デビュー当初より「文壇の貴公子」を自称・他称し、07年には映画主演も果たしている。


【2】『徒然王子』第一部・第二部(朝日新聞出版/1部・1575円、2部・1995円)

08年1月~今年2月まで朝日新聞朝刊で連載。"首都の森"に引きこもっていた王子・テツヒトは仙人の問いに答えるべく、俗世へ旅に出る。それはやがて、時間や次元を超えた魂の放浪へ……。著者渾身の問題作。


■素朴さ・気取らなさで文化系女子を萌えさせる

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伊坂幸太郎(38)

1971年、千葉県生まれ。システムエンジニアとして働く傍ら執筆した『オーデュボンの祈り』で00年デビュー、専業作家に。08年『ゴールデンスランバー』で本屋大賞受賞。ミステリー畑を中心に活動しつつも、エンターテインメント性と同居する高い文学性が評価されている。本人はいまだに仙台で暮らし、地元紙でも連載を複数持つなど、地元への思い入れが強いらしい。


【3】『ゴールデンスランバー』(新潮社/1680円)

伊坂作品ではおなじみの仙台を舞台に、突如として首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡劇を描く。監視社会と人の絆といった社会的テーマが、物語の底に敷かれている。


■文学好きからパンクスまでファンは多いんだけど…

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町田康(47)

1962年、大阪府生まれ。81年、ロックバンド「INU」のボーカル・町田町蔵としてデビュー。96年『くっすん大黒』で小説家デビュー。00年には『きれぎれ』(文藝春秋)で芥川賞受賞。大阪弁で展開される独特の文体や、長編における物語構成力が高い評価を受けている。07年、一緒に音楽活動をしていたギタリストの布袋寅泰に殴られて傷を負い、千葉県警に被害届を提出し、話題になった。


【4】『宿屋めぐり』(講談社/1995円)

執筆7年、600ページ超の大作。「主」の命により、大権現へ大刀を奉納すべく旅をする鋤名彦名。謎の"くにゅくにゅ"に呑まれ、異世界へと転じた彼が歩む、苦行の道中記。表紙がホラー!


■意外な(?)大本命! やっぱり男はオジサマがいい?

大沢在昌(53)

1956年、愛知県生まれ。78年『感傷の街角』でデビュー。10年ほど鳴かず飛ばずの不遇の時期を過ごした後、88年『女王陛下のアルバイト探偵』がミステリ好きから高い評価を得て、注目され始める。90年『新宿鮫』を発表し、一躍ブレイク。以降、ハードボイルド界の流行作家となる。自身の主宰するオフィス大沢には、宮部みゆきと京極夏彦が所属しており、「大極宮」の名前で朗読会などを開催している。


【5】『狼花 新宿鮫9』(光文社/1050円)

新宿署刑事・鮫島の活躍を描くシリーズ9作目。国際犯罪者、不法滞在の中国人女、職務のためにタブーを犯す警官。3人の道が交わるとき、事件は起きる。孤高を貫く鮫島の姿はカッコイイの一言。


■そのほか気になる男性作家の作品はこちら……

【6】『鈍感力』
渡辺淳一/集英社/1155円

07年の刊行時、小泉元首相が国会で同書のタイトルを引用し、話題に。100万部を超えるベストセラーとなった。


【7】『楊令伝』
北方謙三/集英社/1680円

99年から5年余りをかけて完結した北方版『水滸伝』の続編。今年4月には第9巻が刊行された。全19巻となった前作を超えるのか!?


【8】『容疑者Xの献身』
東野圭吾/文藝春秋/1680円

福山雅治主演でドラマ化、映画化され、話題になった「ガリレオ」シリーズの1作。著者にとって6度目の正直となった、直木賞受賞作でもある。



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