──インディーズでも十分売れてたのに、なぜあえてメジャーデビューをしたんですか?
葵 生活だけ考えたら十分できてたんですよ。ですけど、「彩冷える」ってものをもっとたくさんの人に知ってほしいと思って活動してきたので、やはりメジャーってフィールドに出たほうがいいと思ったんです。
──インディーズとメジャーとでは、違いはありましたか?
葵 インディーズ時代は、CDが全然売れなくても、ライブでお客さんが全然入らなくても、マイナスは自分たちだけがかぶれば済むけど、今は、事務所であったり徳間ジャパンさんであったり、たくさんの人々と「彩冷える」を作ってるんで、発言ひとつにも責任感を持つようになりましたね。
──今回のジャケットは、若い女の子に人気のマンガ家・新條まゆさんが描き下ろししたわけですよね。どんな経緯で描いてもらうことになったんですか?
タケヒト デビューシングルは3タイプ作ろうという話になったんですよ。そのうち1パターンだけはほかとは違う攻め方にしようってなって、アニメかなって思ったんです。僕、高校の時に『快感フレーズ』っていう新條まゆ先生のマンガがすごい好きで、「絶対新條先生に描いてほしい」って言ってたんですけど、まさか本当にかなうとは思ってなかったです(笑)。
──『快感フレーズ』って、エッチな描写がふんだんにあることも人気の要因ですが、男子高校生も普通に読むんですか?
タケヒト 普通には読まないと思いますね(笑)。
──タケヒトさんとインテツさんは、某有名進学校のご出身。厳しい校則があることでも有名ですよね。
インテツ 髪の毛が耳に掛かってるだけで怒られます。
──今では中高生に絶大な人気があるらしいですけど、その年代の女の子って、えてして限度知らずに突っ走ってしまうもの。彼女たちの行動に驚かされた経験なんかはありますか?
夢人 そんなに若い子だったかどうかはわからないんですけど、過去にありますよ。ライブで行った某地方のホテルで葵さんと隣同士だったんですけど、夜中の3時頃にノックが聞こえてくるんです。「僕のドアかな?」と思って覗き窓から見ても誰もいない。そしたら突然「葵くーん! いるんでしょ?」とか隣のほうから聞こえてきて。「あら~葵クン、スタッフと打ち合わせの約束でもして寝ちゃったのかな」なんて思ってたら(笑)、ずっと「葵くーん! 葵くーん!」とか言ってて、でも突然ノックがやんだんです。なんかヘンだぞと思って、洗濯しにいくふりして外に出たら、目の前にちゃんといて、しかもたたずんでて(笑)、超驚きました!! あとで聞いたら、別にスタッフと約束したとかじゃなかったんですよ。いやー、なかなか熱心なファンの方だな、と(笑)。
──よくライブに来てる方だったんですか?
葵 翌日、ちゃんとライブ会場にもおいででした(笑)。
──そんな「彩冷える」ですが(笑)、これからどんな方向に行きたいと思ってますか?
葵 ビジュアル系の枠に収まりたくないってのが正直あって、もっともっとたくさんの人に知ってもらう活動が必要だと思います。
──アイドル性もあって、高学歴ってのも面白いですね。
葵 大学生が1人いるってのも。なかなかいいですよ。
──両立って難しくないですか?
タケヒト 大変ですけど、大学生でもあり、メジャーデビューしているバンドの一員でもあるってことが逆にいいです。学校に行くとバンドのことが客観的に見れるし、頭を切り替えることができる。
──バンドがうまくいかなくても、ツブシが利いていいとか?(笑)
タケヒト イヤイヤ。
葵 ホントはそう思ってんじゃないの?(笑)
あやびえ(「る」は発音しない)
写真右より、Gt.夢人/Dr.ケンゾ/Vo.葵/Ba.インテツ/Gt.タケヒト 04年5月結成。5月27日、シングル「会いたくて」で、メジャーデビュー。3パターンあるジャケットのうち1枚を、人気少女マンガ家の新條まゆが書き下ろし&トータルデザインしている。タケヒトとインテツは高偏差値で有名な某進学高校を卒業、さらにタケヒトは、都内有名私大経済学部に在学中。ビジュアル、アイドル性、学歴の三拍子揃った不思議なV系バンド。
メジャーデビューシングル
「会いたくて」
ほとんどのV系バンドがリフ中心なのに、久々にカッティング中心の音楽を聴きましたよ!いやー、すんごい心地よくて新鮮。80年代後半、90年代前半にヒットしたロックって、みんなカッティング中心だった気がするよね。流行は順繰り回るっていうから、ここで彩冷えるが音楽の流れを変えるんじゃないかと予測するわ。歌詞もスイートで、恋愛に夢を持ってる中高生にはぴったりなんじゃない?あたしは、韓流好きのオバちゃん感覚で気に入りました。(発売/徳間ジャパン)
Kei-Tee的インタビュー後記
紅茶教室に通っている草食系男子のインテツさんの口から、伝説のハードコアバンド「GAUZE」の名前が出たり、バリバリのV系だと思ってたタケヒトさんにヤマハギター教室に通っていた過去があったり、ケンゾさんはギターを覚えるのが面倒臭くてドラムを叩くことになったらしいし、バンドの顔である葵さんに至っては、うるさい音楽が嫌いって言うし、夢人さんに話の流れを変えられたり……。最初から最後まで、ありきたりじゃないインタビューになって、最高に面白かった。模範解答するようなバンドって、吐き気がしておなかいっぱいなのよ。いい意味での力の抜け方が、自然で好印象。これからのV系バンドが進む道のような気がするね。
<著者プロフィール>
1973年、東京都生まれ。"神に最も近い男"角川春樹の娘でもある鬼畜ライター。根っからのビジュアル系好きで、元バンギャルにして元アイドル。趣味は霊視。現在1歳の愛娘の子育てに奮闘中。自著に、自薦他薦セレブのインタビュー集『セレブの血』(ワニマガジン)がある。