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第1特集
不況知らずのケータイ業界はノー天気?【3】

一見"絶好調"なのに......ソフトバンクの苦しい台所事情

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──「年間純増ナンバーワン」をアピールしまくっているソフトバンク。過去20カ月間にわたって純増トップシェアを実現したが、その台所事情を覗いてみると正反対の実情が......。

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 近年ソフトバンクの勢いはすごかった。通話無料のホワイトプランで旋風を起こし、昨年には鳴り物入りでiPhone3Gを発売。今年1月には、ついに2000万契約(シェア約18.9%)を突破した。

 しかし、同社の今期第3四半期決算の携帯事業部分を見ると、純増では打ち負かしたライバルとは対照的に、売り上げも営業利益(1349億円)も減収減益。CMでアピールする月額980円「ホワイトプラン」の契約者が増えるほどARPUは下がるという状況にある。07年当初は通話とパケットを合わせて1人当たり5000円あったARPUも、直近では4090円と2割近くも減っている。客単価が最も高いドコモ(6000円)の3分の2という低水準だ。

 さらに、ソフトバンクは資本面で大きな爆弾を抱えている。それは、資本調達を行うに当たり、自社の事業自体をさまざまな形で証券化し、グローバルな金融商品の形にしてしまっていることだ。1兆7000億円というケタ外れの金額でボーダフォンを買収したときも、こうした金融工学を駆使した調達手腕は「孫マジック」として話題になったが、欧米の金融危機のせいで、マジックはあっという間に「孫リスク」へと変わってしまった。事業自体を金融商品化しているソフトバンクでは、債券発行の条件として設定されるさまざまな指標、たとえばキャッシュフローが減ったり、売り上げ目標が達成できないと、たとえ黒字でも「問題債権」として劣化してしまう。「風が吹けば桶屋が儲かる」式の論理だが、こと資金面においては、ソフトバンクは今やライバルと比べても、最も自由がきかない体質へと転落してしまったといえるだろう。

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予想外の連続で契約数を伸ばすも、予想外の金融危機で売却説まで飛び出すハメに。

 勢い、そのしわ寄せは事業支出の圧縮という形で表れる。通話エリアの広さでは3キャリア中最も立ち遅れているソフトバンクなのに、電波基地局への投資を、今期は前期の半分程度と大幅に減らしてしまった。さらに、分厚いケータイの取扱説明書も別売扱い(1500円以上)にしたり、割引制度の「新スーパーボーナス」を「月月割」と改称する陰で、こっそりと端末の割引額上限を以前よりはるかに抑えたり(実質的な端末の値上げ)と、ほかにも数え上げればキリがないほど、顧客サービスを減退させている。巷では、ついにはソフトバンク売却説まで飛び交うありさまだ。


 だが、仮にソフトバンクがどうなろうと、2000万もあるケータイがある日突然ストップし、大量の「ケータイ難民」が発生するなどという事態はまずありえない。資本調達でマジックを見せた孫氏が、どうやってこの難局を乗り切るのか予想は難しいが、新たな「予想外」で、日本のケータイ業界に新風を吹き込んでくれることを期待したい。

(文/三田隆治)
(絵/笹部紀成)


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