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第1特集
【保守対談】激動の09年、日本人は田母神論文ほか、彼らの主張をどう受け止めるのか?

中山成彬×田母神俊雄×西村幸祐 叩かれまくる保守派、怒りの大反撃!!!

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「日本は侵略国家ではない」「日教組は教育のがん」といった主張がもとでマスコミから大バッシングされた、田母神俊雄前航空幕僚長と中山成彬前国土交通大臣。「我々の主張を、マスコミが歪めて報じている」と憤る保守派の彼らが本当に訴えたいことはなんなのか? 両氏に加え、リベラル保守を自認し、"反日マスコミ"がはびこる現状に警鐘を鳴らす論客・西村幸祐氏を迎え、マスコミがタブー扱いする彼らの主張に耳を傾けてみた。

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[座談会出席者]

中山成彬[前国土交通大臣]
田母神俊雄[前航空幕僚長]
西村幸祐[評論家]

──「田母神論文問題」と「"日教組はがん"発言問題」のあらましは、コラムを参照していただくとして、まずこのたび、中山さんと田母神さんのお2人が、ご自分のクビを懸けてでも主張したかったこととは、なんなのでしょうか?

中山 田母神さんの論文の問題と、私の日教組発言の問題の本質は「自虐教育はいけない」ということで、まったく同じなのですよ。

田母神 そうですね。今回問題視された論文で私は、「日本は侵略国家などではない。立派な国だった」と言ったのです。すると「日本の国がいい国だったとは何事か。政府見解では悪い国ということになっているんだ」ということで、あのような騒ぎになったんです。私は何も悪いことはしていません。なぜこのタイミングでああいう主張をしたのか尋ねられることが多いのですが、別に今の時期を選んだわけじゃなくて、前からずっと言ってたんですよ。

中山 私も以前から日教組批判をしていて、テレビカメラが入っているような場でも、それを主張してきたんです。

西村 お2人に共通しているのは、常々主張していたことが急に問題にされたということです。何か意図的なものを感じます。それと、既存メディアが全体主義的な反日翼賛体制になってきたことが問題です。

田母神 2004年6月、当時私は統合幕僚学校(陸海空の幹部自衛官が教育を受ける学校)の校長をしており、海外研修で学生たちを連れて北京に行きました。実は、そのときにも中国の範長龍(ハン・チャンロン)陸軍中将という軍幹部に、論文の趣旨と同質の主張を私はしているんですよ。しかしそのと
きは、面白いことに、防衛庁(当時)も外務省も首相官邸も「よくぞ言ってくれた! なかなか中国に対して言えないんだ」と私を褒める雰囲気だったんですよね。

──なぜ、言えないのですか?

田母神 自衛官が正しい歴史を知らずに反論できないのもありますし、知っていてもかなり気合を入れないと反論できないんですよ。中国軍の幹部に囲まれているわけですから、「逆らったら帰れなくなるかも......」みたいな雰囲気があるんです(笑)。

中山 田母神さんみたいに、しっかり「間違っている」と主張しないとけないのですよ。日本は反論しないから、中国や朝鮮にバカにされるんです。

西村 歴史認識の違いがあるのは当然です。しかし、歴史事実はひとつ。正面から歴史認識をぶつけ合うことが、歴史事実に近づくためには重要なんです。

中山 朝日新聞の社説「空幕長更迭──ぞっとする自衛官の暴走」には、「こんな歪んだ考えの持ち主が、こともあろうに自衛隊組織のトップにいたとは。驚きあきれ、そして心胆が寒くなるような事件である」と書かれてありましたね。

西村 朝日の社説は正直でした(笑)。戦後体制の既得権益が「ゾッと」したんです。 

田母神 今回の論文の件で国会に参考人招致されたときにも、私が萎縮して何も言えなくなると思っていた方が多かったようなんです。でもね、私はけっこう外圧に強いんです。なんぼ圧力をかけられても、これ以上(身長も)小さくならないからね。

中山 ハハハ! それにしても、麻生内閣の動きも極めておかしかったですね。あの臭いものには早くフタをしろというような処置はなんですか。退職金6100万円を返納しろなんて。それに、国会に呼んでおきながら発言もさせない。

田母神 退職金を返納すれば、自分の非を認めることになります。もし私が返納して辞表を出せば、私と同じ主張をしたい人ができなくなってしまいますから、絶対に私は動じません。

西村 田母神さんがマスコミや政府に言われるがままに動いてしまったら、それこそ自衛隊の士気が下がって、大変なことになってしまいますよ。

知らない人のためのマメ知識──【1】
「田母神論文問題」とは?

 08年10月31日、自衛隊航空幕僚長・空将(当時)の田母神俊雄氏が、アパグループ主催「第1回『真の近現代史観』懸賞論文」に「日本は侵略国家であったのか」という論文を応募し、最優秀賞を受賞(後に賞金300万円の受け取りは辞退)。がしかし、その内容について、「政府見解の"村山談話"に反する」「文民統制違反」などとメディアが批判。浜田靖一防衛大臣らは田母神氏に辞表を出すよう説得したが、「一般国民として書いたエッセイであり、自衛隊法46条(「隊員にふさわしくない行為があった場合は懲戒処分を下す」という法律)には触れていない」「村山談話には違和感を覚えているが、直接批判はしてない」「論文の内容は国家、国民のためになる」などとして、田母神氏は断固拒否した。結果、即日に航空幕僚長の職を解かれ、11月3日付で定年退官となった。事実上の更迭である。同月11日、田母神氏は国会に参考人招致されたが、「私が発言しようとすると、北澤俊美外交防衛委員長に2回も制された」(田母神氏)という。ヤフーなどネットのアンケートでは田母神氏を支持する声も多く、同月29日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)でのアンケートでも、約6割の視聴者が田母神氏の主張に共感するとの結果が出た。また、「防衛省の制服組(自衛官幹部)の99%が私の論文を支持していると信じています」(同氏)という。

 後に、懸賞論文にはほかにも航空自衛隊から97人の隊員の応募があったことが発覚。12月25日、防衛省は田母神論文に関する調査結果と再発防止策をまとめた報告書を、首相官邸の防衛省改革会議に提出。「防衛省・自衛隊に対する信頼を傷付け、文民統制の面からも適切ではない重大な事案」とし、今後、自衛官教育の中身をチェックしていく姿勢を示した。

石破大臣への反論!「文民統制」の本当の意味 

──田母神さんの論文をめぐる論争で、"文民統制(シビリアン・コントロール)"という言葉がよく出てきましたよね。この言葉はマスコミによってさまざまな解釈で使われており、正確な意味がよくわからないのですが......。

田母神 まず文民統制っていう言葉がね、日本ほど聞かれる国はほかにありませんよ。日本だけが「自衛隊が力を持つと暴走する」と考えている。だから文民統制が必要だというのですが、これもまた、自虐的な歴史観から来るものなんですけどね。

中山 自衛隊の問題になるといつも、そういう間違った歴史観が顔を出します。

田母神 一般的に文民統制というのは、軍を使って問題解決するのか否かの決定権を政治が握っているということ。なので、軍(日本の場合は自衛隊)が勝手に行動することは絶対ないという前提なんです。「出動も撤収も、すべては政府の命令によって自衛隊は行動する」というのが、文民統制です。予算や隊
員の数、戦闘機の数も政治によって決まりますが、その後の「人と物と金を使って最強の軍を作る」という作業はミリタリーの専門分野のはず。というのは、軍を鍛えて強くするためには、素人ではわからないノウハウが多くありますから。だから、世界中で軍人という職業が認められている。政治家や素人の文官が、最強の軍を作ることは絶対にできません。ところが日本の場合、制服組だけに任せず防衛省にある内局(背広組)という文官の組織が、自衛隊に関してかなり細かく口を挟んでくる。そうすると、いわば箸の上げ下ろしまで文官に指示されるような状況になるわけです。そういう意味では、アメリカやイギリス、フランスなどに比べると、日本は文民統制がかなり徹底されています。日本の文民統制はどちらかというと、北朝鮮や中国に近いのです。今以上に文民統制が強化されたら自衛隊がもっと動きにくくなり、訓練もしづらくなって、自衛官がやる気をなくして弱体化します。

中山 浜田防衛大臣は、文民統制をより強化し、自衛官の歴史教育のあり方を見直すなんて言ってるでしょ。もはや思想統制ですよ。今の政府とマスコミの流れは、日本の国防力を弱め、他国から侵略されやすくしているとしか言いようがない! 本当にわかっているのかなと思う。

西村 それにしても、若い国会議員は勉強不足で歴史に無知な上に、文民統制のイロハも知らない、悲惨です。そもそも軍隊と認められていない組織に、文民統制というのは論理矛盾ですよ。

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田母神俊雄氏。

田母神 おっしゃる通りです。石破茂元防衛大臣(現・農水大臣)なんかね、軍事オタクだからもっと歴史も知っているかと思っていたんです。ところが全然知らない。

西村 彼ははただの兵器オタクですよ。それに、北朝鮮問題でも非常におかしな姿勢を見せている。拉致議連の会長だったことが信じられません。

田母神 昨年、私が東大の五月祭で、「極東の軍事情勢と21世紀における我が国の針路」というテーマで講演したとき、石破氏は「空幕長、中国が脅威だとか言わないでください」「東京裁判史観を真っ向から批判しないでください」って、紙に書いてよこしたからね。「ああ、この人はちょっと変だな」って思いましたよ。


中山 東京裁判史観を完全に刷り込まれているんだね。

田母神 「文藝春秋」の09年1月号に、石破氏が文民統制について寄稿しているんですが、私はそれを読んで本当にガッカリしました。彼はまず消極的な意味で、「文民統制とは、軍がクーデターを起こさないように見張っておくことだ」と、書いているんですよ。石破氏は防衛庁副長官、防衛庁長官をやって、防衛大臣にもなっているのに、我々自衛官をそんな目で見ていたのかと思うと、本当に悲しかった。自衛官は、暴力革命は絶対にダメだと徹底的に教え込まれていますし、暴力でこの国を変えたいなんて、一切考えていません。彼はね、さらに「田母神幕僚長は今回越えてはいけない一線を越えてしまった」とか述べてますが、歴史認識を述べることが越えてはいけない一線なのでしょうか。

西村 石破氏は、自衛隊を国の軍隊ではなく共産国のように党の軍隊だと思っているのか。あるいは、アメリカを非常に恐れているような気がします。

──しかし、中には偏った思想を持つ自衛官もいるのでは?

田母神 調べたことがないのでわかりませんが、まあ、いるかもしれないですね。

西村 僕なんかは、そういう過激な保守の自衛官がいてほしいと思いますけど(笑)。

中山 たとえいたとしても、クーデターを起こすほどの大勢にはならんでしょう。むしろ自衛官の士気が低下するほうを心配しますよ。

田母神 クーデターとなると、相当数の人員が必要です。だから、そんなことは絶対に起こりません。それに、私だってゴルフとか、来週、再来週までの予定が入ってるんですから、クーデターなんてやってられませんよ(笑)。

知らない人のためのマメ知識──【2】
「"日教組はがん"発言問題」とは?

 08年9月25日、中山成彬国土交通大臣(当時)が、「日教組の強い県は学力が低い」「(成田空港拡張反対派について)ゴネ得」「日本人は単一民族」などの問題発言で、就任からわずか5日後に辞任に追い込まれた。中山氏は言葉足らずだったとして謝罪したが、日教組への言及についてだけは失言ではないとし、さらに「日教組は教育のがん」と吐き捨てた。

 日教組とは、日本最大の教員労働組合のことである。発言の背景には「一部の組合員教師が偏った政治思想を教育の場に持ち込み、自虐教育や過激な性教育などを行って子どもたちに悪影響を及ぼす」との主張があったが、メディアは「大臣にあるまじき暴言」などと批判。中山氏は辞任の理由を、「当時補正予算案の成立が急がれており、私が大臣でいる限りは民主党が審議に応じなかったため」と、本誌前号で語っている。ちなみに、町村信孝など歴代の閣僚の中にも日教組を批判した者はいたが、バッシングはされていない。
 同年11月、長年にわたって日教組と戦ってきた元鎌倉市議・伊藤玲子氏による『中山成彬はなぜ日教組と戦うのか』(KKベストセラーズ)が発売。同書の中で中山氏は、「日本国家再生のためには教育再生しかない」とし、そのためには「子どもたちに誤った歴史教育を行っている日教組を一刻も早く解体しなければならない」と、断固として日教組と戦う姿勢を示している。

日本人は"間違った歴史"を刷り込まれている!?

──なぜ日本のマスコミや政府が、皆さんのような保守派の意見を聞き入れないのだと思いますか?
中山 だから教育ですよ、諸悪の根源は。歴史を歪めて教える自虐教育です。小中高で「日本はアジアの国を侵略した悪い国で、おじいちゃんたちは残虐で悪いことばかりしてきた」と教えられれば、子どもは反日思想になってしまう。そんなとんでもない自虐教育を、日教組が推進しているんです。私が日教組を悪だと考えている根本の理由は、そこなんですよ。素直で優秀な子ほど、教わるがままに信じてしまう。私は、小さい頃から批判精神旺盛だったから、日本が悪い国と教わっても「そんなことあるか!」って思ってましたけど。

田母神 「日本は素晴らしい国だ」と日本人であることを誇りに思い、愛国心を持っていないと、自衛官は自分を犠牲にしてでも国益を守ろうとは思えませんよ。だから私は、ずっと自虐史観はもうやめようと主張してきたんです。

西村 既存メディアの多くは国籍がありません。記事をよく読むとわかるけど、国家意識がない。日本をアメリカの属国に置く戦後レジームにどっぷり浸かっているので、自立という意識がないし、日本の立場ではなく中国や韓国の立場で報道します。

田母神 彼らは、「国は守らずとも存在し得るもの」と思っているんですよ。国は国民自らが守らねば、長期的に存在し得ないというのに。

中山 すべては政治の怠慢です。私が会長を努めている自民党の議連「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」でね、自虐史観のもとである東京裁判をもう一度勉強し直そうと動きだしているんですよ。検察官と判事のすべてが戦勝国の人間で固められた、あの不当な東京裁判で刷り込まれた自虐史観が、ずっと日本を縛っている。

田母神 大東亜戦争(第二次世界大戦)で日本は、歴史上初めて戦争に負けました。敗戦すれば、その後しばらくの間、敗戦国は戦勝国の歴史を強要される。そのため、勝者にとって都合の悪い事実は、隠滅されてきたわけです。
だから、いつの時点かで、必ず自国の本当の歴史を取り戻さなければ国が立ち行かなくなると、私は思うんです。今までアメリカに都合の悪い資料は検閲・隠蔽されてきましたが、冷戦が終わり、戦後50年過ぎたあたりから、やっと「ヴェノナファイル」「マッカラム覚書き」「ウェデマイアー回想録」など彼らに都合の悪い資料も出てくるようになった。今こそ、日本の歴史を取り戻すときなんです。ずっと日本が悪いという歴史を押し付けられたら、やがて日本は日本でなくなってしまう!

中山 私は1853年のペリー来航から日本の近現代と考えますが、そこから日本の歴史をキチンと学校で教えるべきなのです。しかし、教科書自体が自虐史観で書かれている。

西村 戦後間もない頃は、左翼でも反日的ではなく、まともだった。ところが、戦前を知る人たちが亡くなって、おかしくなっていきました。いわゆる「戦犯」も52年に主権回復後、社会党議員の提案で全員が犯罪者でないと、国会で全会一致で認められました。南京大虐殺や従軍慰安婦強制連行のことも、すべて連合国と中国・韓国のでっち上げですからね。

──ほ、本当ですか!? 学校ではそんなふうに習っていませんが......。

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西村幸祐氏。

西村 従軍慰安婦問題は10年前に決着がつきました。だから、中学の歴史教科書に載らなくなった。南京問題はこれからですね。

中山 いや、従軍慰安婦問題もまだ尾を引いてますよ。断っておきますが、私らは右翼じゃありませんからね。先ほどの「~歴史教育を考える議員の会」で、07年に南京事件の検証小委員会を作り、昨年11月に『南京の実相』(日新報道)という本を出したんです。ちょうど田母神さんの論文が騒がれだした頃です。日本軍が南京で30万人の中国人を虐殺したとされていますが、そんな事実はありません。当時南京市の人口は20万人で、陥落後は人口が逆に増えていったんです。この南京事件も東京裁判で突然問題になった。


西村 ねつ造ばかりです。昨年12月に報じられましたが、中国の南京大虐殺記念館からやっと撤去されたねつ造写真は3点だけです。お話にならない。「連行される慰安婦たち("日本兵が中国人女性を陵辱するために連行しているシーン"などの説明書きがある、橋の上を女性たちが渡っている写真)」なんて、写っている女性は笑っている。しかも「アサヒグラフ」の写真です。それを本多勝一やアイリス・チャンが南京虐殺の証拠と言っていたんですから、笑えますよ(笑)。

中山 あの当時の中国は、匪賊や軍閥などがはびこっていて、本当に乱れていたんです。そんな中、日本兵は中国の人たちを守り、市民の畑仕事の行き帰りを護衛していました。「連行される慰安婦たち」も、そんなふうに日本兵が移動する女性を守っている写真なんですよ。まったく逆に使われている。私たちは当時の時代背景を知った上で、歴史認識を深めなければなりません。

西村 従軍慰安婦はただの「追軍慰安婦(軍人相手に商売をしていた売春婦)」。朝日新聞の植村隆や北畠清泰のでっち上げですよ。兵隊が多い所には若い男性が多く、性が商売になるから、若い女性が増えただけの話です。

田母神 だいたい、従軍慰安婦といわれている人たちは金持ちになる人が多かったからね。今でいう、ファッションヘルスとかと同じだよ。ああいうところは高いお金をもらえるでしょ?

西村 (笑)。現に米軍の戦略謀報局(OSS)が44年に慰安婦を尋問して作成した報告書には、彼女たちが日本軍の将官クラスの3倍の給料を業者からもらっていた事実について触れています。

中山 朝日新聞が大キャンペーンした情報が独り歩きし、アメリカの下院をはじめ各国議会で、日本政府への従軍慰安婦に対する謝罪要求決議が採択されてしまっている。実は、この問題は拉致問題にまで影響しているんです。というのは、国連で拉致非難決議を持ち出すと、北朝鮮が「日本だって従軍慰安婦を連行したじゃないか!」と反論する。だから、朝日新聞は非常に国益を損ねているんですよ! 「あれはでっち上げでした」と、国民に謝罪するべきです。日本人の中に一番反日的な人たちがいるのが、日本の不幸です。

西村 今は武器による戦争だけではなくて、"情報戦争"が常に進行していることを日本人は知らなさすぎます。この従軍慰安婦の問題にしても、アメリカで非難決議が採択されれば、北朝鮮にとっては非常に有効なポイントになるわけ。拉致問題に対する国際世論の盛り上がりを抑えられますからね。

田母神 日本人は基本、「世界の人は皆いい人」だと思っていますけど、実際は皆腹黒いんです。日本人は、自衛隊が国を守るために戦う体制を整えようとすると、イコール戦争だと考えてしまいますが、そういう姿勢を見せるだけでそれが抑止力になり、戦争にはならないんです。

西村 北朝鮮の拉致だって、日本が武力を使ってでも被害者を取り返す姿勢を見せれば、なくなりますよ。政府が認定していない拉致の疑いがある失踪者で最も最近の人は、04年に失踪した小山修司さんです。拉致はまだ続いているんです。

田母神 私は、77年に起きたダッカ日航機ハイジャック事件(パリ発東京行きの日航機が、同胞の釈放と身代金を要求する日本赤軍によってハイジャックされ、当時の福田赳夫内閣が超法規的措置を取って囚人を釈放、約16億円の身代金まで渡した事件)が、日本が世界になめられるようになった発端だと思っています。現に、この事件の1カ月半後に横田めぐみさんが、その翌年には曽我ひとみさんや蓮池薫さんらが拉致されていますからね。77年を境に、日本は国として、どんどんおかしな方向に向かっています。82年には教科書誤報事件(文部省が教科書検定で、『華北へ侵略』と表現されていた個所を『華北へ進出』と書き換えさせたという誤報が流れ、中国が抗議した事件)があったりね。

西村 中国が「南京大虐殺があった」と騒ぎだしたのも、82年、日本国内で繰り広げられた反日勢力のキャンペーンに合わせてで、日本社会党(現・社会民主党)や左翼労組の総評の資金援助を受けて85年、南京大虐殺記念館がオープンしたんです。

誤解を恐れず、核武装について口にする理由

──田母神さんや西村さんは、核武装についてもよく言及されていますよね。

田母神 いまや核兵器というのは、まず使われることのない兵器なんです。ただ、核兵器を持っている国とそうでない国とでは、外交上で対等な交渉はできない。結局、核保有国に必ず意志を強要させられるんです。核戦争には勝者はありません。核戦争を起こせば、両方の国が負けることになる。普通の兵器であれば、10対1なら、戦争したら10のほうが必ず勝ちますが、核兵器は一発命中しただけで、たとえアメリカのような大国でもその被害に耐えられませんから。だから、「北朝鮮が1~2発核兵器を持ったぐらいで騒がなくても......」などと言われることがありますけど、1発持っているだけで核の抑止力になります。

──でも、「核を持つ」という発想自体が、なんかトンデモな感じがして、少し怖いです......。

田母神 私はどうだい? 怖くないでしょ?(笑) イイ人なんだよ、私は。

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中山成彬氏。

中山 イイ人だから叩かれやすいんです。私もそうだけどね(笑)。

西村 (笑)。核の話に戻すと、私の友人で、石平(セキ・ヘイ)氏という、一昨年日本に帰化した元中国人の評論家が「日本は唯一の被爆国。もう二度と被害を望まないのならば、日本は核武装をすべきだ」と言っています。まったくその通りです。僕も被爆国だけが核武装できる権利があると思います。

中山 64年の中国による初の核実験成功を受けて、時の総理大臣・佐藤栄作氏が、日本と中国が戦争になったらアメリカに核報復をするよう要請した、という外交文書が昨年末に見つかりましたよね。やはり、一国の首相ならば、そこまで考えるべきなんです。


西村 僕はその報道で、佐藤氏を見直しました。ところがマスコミは本当にバカで、本来ならば佐藤氏を褒めたたえるべきなのに、まるで佐藤氏がとんでもない総理だったみたいな、真逆の報道をしていましたからね。頭がおかしいのかと思いましたよ。

田母神 日本では、核について議論することさえも大罪であるかのように扱われるんです。議論するだけでも十分、核の抑止力になるんですけどね。

西村 国会議員の間で核武装検討委員会を作るだけでも、6カ国協議は大きく変わると思います。北朝鮮は急に拉致被害者を返すと言ってくるはず。

中山 6カ国協議も、北朝鮮に鼻づらを引っ掻き回されています。

──しかし、どんな理由であれ、戦争や人殺しは許容し難いというのが一般の国民が持つ考え方だと思います。皆さんのそうした主張を根付かせるのは、なかなか難しいのでは?

田母神 それでも国土の警備が絶対に必要であることを、国民はもっと自覚すべきです。もし何もせずに放置していれば、東京湾に外国船がどんどん入ってきて、気がついたら東京湾が外国船で占拠されていたなんて状況になりかねませんよ。

中山 すでに中国の軍人がアメリカに、「太平洋を2つに分けて東と西に分割し、アメリカは東を、中国は西を統轄しよう」と提案してるんですよ。そういう戦略のもとで、中国は着々と軍備を拡充し、尖閣諸島を脅かしている。そんな中で民主党は、沖縄を一国二制度(沖縄を日本本土とは分離した領域として経済特区にし、中国に対する香港のようにしようとする制度)にするなんて言ってます。これはもともと日教組の主張です。日本の反日勢力は、そこまで考えてるんですよ。だから私は、民主党政権だけはダメだと言ってるんです。このままだと本当に日本は危うい。中国の李鵬元首相が95年に、「日本なんて20年後にはなくなる」と、オーストラリアに言いましたが、現実にそうなる危険性もありますよ。

──自衛隊の防衛力は、どの程度なんでしょうか?

田母神 この15年間で相対的に低下しています。戦後からバブル崩壊まで、日本の防衛費は周辺のアジア諸国を圧倒してきました。実際、15年程前までは日本の物理的戦力はかなりのものだった。たとえ中国空軍が攻めてきても、完全に防御できる戦力を持っていた。しかしバブル崩壊後、日本は防衛費が年々マイナスになる一方で、中国や韓国は軍費を2桁成長させてきました。今や、戦闘機の数では日本は中国に負けている状態です。このまま5〜6年放置していれれば、航空自衛隊は中国に勝てなくなりますよ。そうなると、日本の領土はもっと不安定な状態になるでしょうね。やはりカネをかけなければ負けてしまいます。

中山 その通りです。にもかかわらず、メディアは自衛隊を叩き、防衛力を弱体化させることばかり。民主党もですが、本当に自民党も情けないですね。

田母神 自民党は、何か都合の悪い問題が起こるたびに、少しずつ左側に寄っていく姿勢をぜひやめていただきたい。もうこれ以上左に寄ったら、日本はおしまいだと思います。

──皆さん、今後どうやって主張を世に浸透させていかれるつもりですか?

中山 自民党内に90人近い「日教組究明議連」ができました。これを中心に、これから全国で教育現場を正常化する国民運動を展開していきます。それと前述のように自民党内で、自虐史観の根源である東京裁判をもう一度、勉強し直したいと思います。そして、村山談話(95年、当時の村山富市総理大臣が発表した、日本が侵略国家であることを日本政府が公式に認めて謝罪した談話)や河野談話(93年、当時の河野洋平官房長官が従軍慰安婦を認めた談話)など、国益を損なっている問題を見直す気運を高め、日本の若者に自信と誇りを取り戻したいですね。

田母神 私は、6月ぐらいまで講演と本の執筆に専念して、せっかく盛り上がったこの保守の空気ができるだけ長く続くように努めていきたいです。だから、今回の件も結果としては良かったんじゃないかと思っています。核兵器のことなどについて私が言及すると「怖い人だ」と思う方もいるかと思いますが、それでも国を守るために、本当のことを言い続けるつもりです。

西村 国民はもう目覚めています。田母神さんのご本がベストセラーになっていることがそれを証明しています。重要なのは、国民一人ひとりが既存メディアの情報操作を見破る情報回路をインターネットで作ることです。

──今日はどうもありがとうございました。ところで田母神さん、制服はもうお持ちでないんですか?

田母神 国に返納しちゃったけど、自腹で買った制服はまだあります。でも着ると、また怒られちゃうからね(笑)。

(構成/遠藤麻衣)
(写真/田中まこと)

田母神俊雄(たもがみ・としお)
1948年生まれ。防衛大学校電気科卒業。防衛庁(現・防衛省)に入庁。第6航空団司令、統合幕僚学校長、航空総隊司令官などの要職を経て、07年3月、航空幕僚長に就任。08年10月、最優秀賞を受賞した懸賞論文が政府見解と異なるとして問題視され、航空幕僚長の職を解任された。著書『自らの身は顧みず』(ワック・マガジンズ)が反響を呼んでいる。


西村幸祐(にしむら・こうゆう)
1952年生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科中退。80年代に執筆活動を開始、日韓W杯後に拉致問題やメディア批判の評論を展開。「撃論ムック」(オークラ出版)編集長、「表現者」(ジョルダン)編集委員。『反日の構造』(PHP研究所)など著書多数。ブログ「酔夢ing Voice」は、1000万アクセス突破。


中山成彬(なかやま・なりあき)
1943年生まれ。東京大学法学部卒業。大蔵省(現・財務省)に入省。86年、自由民主党公認で衆議院選挙に初当選。04年、文部科学大臣として初入閣し、08年には国土交通大臣に就任。しかし、「単一民族」「ゴネ得」「日教組は教育のがん」などの発言がもとで、同年9月、辞任した。「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」会長、自民党有志議員による「日教組問題究明議員連盟」顧問でもある。



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