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格付け会社の功罪【4】

経済学者・堺憲一が読み解く、"経済小説の中の"格付け会社の実態とは?

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【1】『その「格付け」に異議あり』著/
江波戸哲夫 発行/徳間書店 発行
年月/98年10月 価格/1680円(絶
版/税込)

──「何かもっとエキサイティングに、格付けについてわかる術はないだろうか......」と思った読者諸兄にオススメしたいのが、経済小説だ。本稿では『この経済小説がおもしろい!』(ダイヤモンド社)の著者である経済学者・堺憲一氏に、格付け会社を描いた経済小説作品の楽しみ方を案内していただこう。

 経済小説の中で、格付け会社が主題になっている作品はさほど多くありませんが、いくつか面白いものがあります。まず、江波戸哲夫さんの短編『その「格付け」に異議あり』【1】が、私の知っている経済小説の中では一番古い作品です。1998年の刊行なので、格付けが今ほど人々の関心の的になっていない時期のものですね。主人公は、企業から依頼を受けて、その会社の格付け見直しに際してコンサルティングを行っている元証券マン。ある日、大手総合電機メーカーの重役から、自分の会社がネガティブな方向での見直しの対象になったので、どうにかしてほしいと依頼を受けます。引き受ける前に、格付け会社の感触を確かめようと主人公がいろいろ動いて話が展開していく......というストーリーです。

 こうした職業が実在するかどうかはさておき、格付けが下がれば企業は株価が下がったり金利負担が上がったりするわけで、そうした場合の焦りや苦悩がよくわかります。また、格付け会社の担当者が常に尾行を心配している描写が出てきます。要は、いろいろな会社から恨みを買っているから、いつ危害を加えられるかわからないと思って外を歩いている、と。格付けする側も、恨まれること覚悟でやっているという心情が、人間ドラマとして描かれています。

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格付け会社の功罪【3】

ミシュランだけじゃない! 食肉、マラソン大会、葬儀屋まで......意外と使える日本の格付け

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『ものごとの「格付け」事典』(日本実
業出版社)。

──昨今話題に上がる"格付け"の多くは、投資家向け。私たちの生活に直結するものではない。では、我々が活用できる"格付け"にはどんなものがあるのか?ここでは、独立行政法人など、特定の団体が定める格付けの中で、実生活に役立ちそうなもの、変わった格付けなどをピックアップしてみた。

 これまでは、金融庁の指定格付け機関とその役割について見てきた。こうした格付けは、投資家などを中心に活用されているが、国債投資など無縁、という人も多いのでは? とはいえ、格付けは投資家だけのものではない! ここでは、我々の生活にも関係するかもしれない格付けを紹介しよう。

 まず、生活の中に入り込んだ〈金融商品〉といえば「生命保険」。「生命保険格付協会」では、各生命保険会社を財務内容や支払いトラブル率、販売員の質などから多角的に検証。そのほか、各保険サービス、保険代理店に至るまで格付けを実施しており、保険選びの強い味方となるだろう。また「日本不動産格付株式会社」は「不動産」を、「AIゴルフ総研」では「ゴルフ会員権」の格付けを行っており、こちらは主に資産価値の判定に利用されている。

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格付け会社の功罪【2】

格付けは公共財にすべき!? 格付け会社はグローバル金融市場の"必要悪"なのか?

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『経済は格付けで動く』(中経出版)。

──前段では、リーマン・ショック以降、主に日本における格付け会社の動向をリポートした。そこで本稿では、約100年に渡る格付け会社の歴史を追い、その間に格付け会社が犯してきたさまざまな"ミス"を通して格付け会社の存在意義を問うてみたい。現在の金融市場において、格付け会社が果たすべき役割とは?

 格付付け会社にまつわるさまざまな事件を見ていると、「いち私企業が、会社や国の将来を予測して格を付けるなんて、無理があるんじゃないの?」と感じる方も多いのではないだろうか?「この会社は大丈夫!」と太鼓判を押したり、逆に「この会社は信用できない!」と警告したり、それによって巨額のカネが動き、投資家や起債者(債券の発行者である国や企業)たちの運命はもちろん、世界経済の運命を動かすのである。たったひとことで大企業が倒産し、世界中の人が路頭に迷うかもしれないのだ。

 しかし、前ページでも述べた通り、格付け会社による格付けは、本来的には単なる「予測」にすぎない。事実、『経済は格付けで動く』(中経出版)などの著作がある日本大学経済学部教授・黒沢義孝氏は、次のように述べる。

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格付け会社の功罪【1】

消費税増税で日本の"格"もダウン!? 企業の"借金返済能力"を計る格付け会社は世界を滅ぼすか?

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『格付けの深層』(日本経済新聞出版
社)。

──国や企業の発行する債権に対し、その信用度をランク付けする「格付け会社」。1900年代にアメリカで生まれたこの業種は、2000年代後半にはリーマンショックを引き起こす原因になったとして批判を浴びた。それでも格付け会社各社は今現在も、イタリアやスペイン、そして日本の国債格付けを引き下げて広く世界に影響を与えている。格付け会社が世界経済を震撼させる日が、再び来るのだろうか?

 欧州金融危機の深まりと共に、大手格付け会社への風当たりが強くなっている。イタリア財務警察は1月24日、市場操作を行った疑いで、世界三大格付け会社の一角フィッチ・レーティングスへの捜査に着手。昨年には、同じく大手のスタンダード・プアーズ()、ムーディーズ・インベスターズ・サービスへの同様の捜査も行われている。今回のフィッチ捜査は、S&Pが1月13日にイタリアを含む欧州9カ国を格下げし、各国の政策担当者や市場関係者が一斉に反発した矢先の出来事だった。

 2008年のリーマン・ショックをはじめ、このところ世界的な経済問題が起きるたびに話題となる格付け会社とは、そもそもどんな組織なのか?

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タブー破りのビジネス書【9】

脱洗脳のプロ・苫米地英人が選ぶ「ビジネスマンのための"脱洗脳"ビジネス書」

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脳機能学者
苫米地英人(とまべち・ひでと)

1959年生まれ。脳機能学者。カーネギーメロン大学博士。オウム真理教の元信者たちへの脱洗脳を手掛けるなど、「洗脳技術」研究の権威として知られる。近年は、執筆活動の傍ら、能力開発プログラム「PX2」「TPIE」の普及などに尽力中。

■「電通タブー」は欧米銀行支配の象徴 ビジネスマンは大局的な視点を持て!

──苫米地さんの能力開発、コーチングに関する著作には、ビジネスマンの支持者も多いと思いますが、そんな苫米地さんが勧める、タブー破りのビジネス書を紹介してください。

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タブー破りのビジネス書【8】

AKB48の卒業生社長・川崎希が選ぶ「起業の難しさを知るビジネス書」

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ANTI MINSS代表取締役
川崎 希(かわさき・のぞみ)

1987年、神奈川県生まれ。AKB48の第1期生として09年2月まで所属。卒業後はタレント業の傍ら、実業家としても活躍。著書に『「AKB48」卒業翌日に40万円で起業しました。アイドル社長』(徳間書店)がある。

■カーネギーの人材育成はマネするな?"六星占術"で事業拡大に大成功

──川崎さんは2009年2月27日にAKB48を卒業し、それから2日後の3月1日にメンズアパレルブランド「アンティ ミンス」を設立。現在は渋谷と新宿でネイルサロンも経営され、女性実業家としても活躍していらっしゃいますが、そもそも「起業しよう」と思われたきっかけは?

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タブー破りのビジネス書【7】

『夢をかなえるゾウ』作家・水野敬也が選ぶ「本当に成功するためのビジネス書」

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作家
水野敬也(みずの・けいや)

処女作『ウケる技術』(新潮文庫)が30万部のベストセラーに。また講演DVD「スパルタ恋愛塾」(ポニーキャニオン)や「温厚な上司の怒らせ方」(ビクターエンタテインメント)の企画構成・脚本なども手掛ける。

■ワンテーマを押し切るハウツー本は宗教みたいで気持ち悪い!?

──代表作『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)が、累計170万部を記録。ベストセラー作家となった水野さんは、以前、本誌でも「恋愛体育教師」として恋愛マニュアルの連載をしていただいていました。最近はあまり他誌でも執筆されていないですよね。もう一生分のお金は稼いじゃったんですか?

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タブー破りのビジネス書【6】

辛口コラムニスト小田嶋隆が選ぶ「ビジネス書嫌いも読めるビジネス書」

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コラムニスト
小田嶋隆(おだじま・たかし)

1956年、東京都生まれ。コラムニスト。11年11月、「日経ビジネスオンライン」の人気連載「ア・ピース・オブ・警句」をもとに書籍『地雷を踏む勇気』(技術評論社)、『その「正義」があぶない。』(日経BP)を刊行。

■日経BPが自身の存在意義を否定!?ラブ&ピースなアンチビジネス書

──前提として、小田嶋さんは日頃ビジネス書ってお読みになりますか? 普段書かれているものからは、あまりそういうイメージがないですが......。

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タブー破りのビジネス書【5】

横浜DeNAベイスターズ社長・池田純が選ぶ「ビジネス書にあらざるビジネス書」

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横浜DeNAベイスターズ球団社長
池田 純(いけだ・じゅん)

76年、神奈川県生まれ。大学卒業後、住友商事、博報堂を経て、07年、株式会社ディ・エヌ・エーに入社。同社による横浜ベイスターズ買収に伴い、11年より、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代球団社長に就任。

■空気の研究から戦国時代の処世術まで IT時代だからこそ使える経営手法

──新球団の初代球団社長に就任されましたが、今後のDeNAベイスターズはいろいろな意味で注目が集まると思います。そんな池田社長が選んだのは、師匠だった人から受け継いだという『「空気」の研究』【1】。昨今話題になることが多い"場の空気"について書かれた日本社会論の名著です。

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タブー破りのビジネス書【4】

サイゾー創刊編集長・小林弘人が選ぶ「企業のメディア化を考えるビジネス書」

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インフォバーンCEO
小林弘人(こばやし・ひろと)

1965年生まれ。株式会社インフォバーンCEO。東京大学大学院情報学環教育学部非常勤講師。「ワイアード」「サイゾー」「ギズモード」など、多くの雑誌、ウェブメディアを立ち上げた"メディア"のプロ。

■透明化、コモディティ化、メディア化......企業自らがタブーを破って見える将来

──『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)に次ぐ著作『メディア化する企業はなぜ強いのか?』【1】を上梓されましたが、企業自らがメディア化するということは、やはり我々雑誌や新聞の"死"が近づいている印象を受けてしまいます(苦笑)。

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