荻上チキの新世代リノベーション作戦会議
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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第15回

政府や県が市町村復興の足を引っぱる!? 肥大化した政府が生んだ地域医療への障害【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「政府でなく県でもなく 地域主導で被災地医療を!」

ゲスト/上 昌広[医師]

 病院間のたらい回しや医師不足など、現行の医療制度の穴はこれまでも指摘されてきた。そして東日本大震災以降、平時を上回る、医療をめぐるトラブルが被災地では発生し続けている。健康調査等のためにたびたび福島県へ赴いている医師・上昌広氏に、医療ガバナンスの観点から、今回の被災地医療における最大の問題点を問う。

荻上 東日本大震災からの復興に際して、新しい経済的支援の枠組み「CFW(キャッシュ・フォー・ワーク)」を紹介した前回に続き、今回は医療の問題にスポットを当てます。お尋ねするのは、医療ガバナンスをご専門にされている東京大学医科学研究所特任教授の上昌広先生。震災発生直後から精力的に福島県に入られて医療支援活動に携わりつつ、独自の地域医療ネットワークを駆使し、編集長を務められるメールマガジン「MRIC」(by 医療ガバナンス学会)をベースに、「何が現場で求められているのか」についての情報発信を積極的になされています。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第15回

政府や県が市町村復興の足を引っぱる!? 肥大化した政府が生んだ地域医療への障害【後編】

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【前編はこちら】

実情を無視した不合理な医療体制をいかに変えるか

荻上 政府や県は、実態に合わない一律のやり方を押しつけることによって、産業や医療の現状をズタボロにしている。しかし、そもそも震災や原発事故以前からも、医療やさまざまな社会保障制度は、自治体各々の裁量に任せ、柔軟性を発揮させるべきだと言われ続けていました。そういう意味で、直接的な震災や原発事故への対策というより、震災以前からあった制度的な問題が、今回の機会であらためて表面化したケースもあるのではないかと思います。例えば医師不足もまた、かねてより問題視されてきたわけですから、容易に「替え」が利かない状況を野放しにしたツケであるとも言える。

 福島県の医療に関しては、とにかく医師の確保がボトルネックなんです。医師の供給機関が、福島県立医科大学、つまり県頼みなので、そこに抗えない構造がある。相馬市の立谷秀清市長みたいな強力な首長なら外からかき集める手もありますが、基本的に供給が過少なので、県側が圧倒的なパワーを持っている。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第14回

ボランティアより被災者が働くべき!? 注目を集める復興支援策「キャッシュ・フォー・ワーク」とは?【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「被災者自身の労働でお金を 回して災害からの復興を!」

ゲスト/金子良事[社会政策・労働問題研究者]

 東日本大震災から3カ月が経過した。被災地でのボランティアの活躍が伝えられるが、そうした無償の支援とは異なる、復興支援の新たな枠組み「キャッシュ・フォー・ワーク」が動きだしている。原発事故をめぐる報道合戦が加熱する中で、復興に向かい始めた被災地を、いかにバックアップするか? これからの災害支援を考える。


荻上 東日本大震災は日本経済にも地元経済にも、甚大な被害をもたらしました。地域によっては震災直後、さまざまな市場そのものを喪失し、今なお雇用にも深刻な影響を残しています。そうした中、経済的な復興支援の枠組みとして、キャッシュ・フォー・ワーク(以下、CFW)の導入が注目を集めています。これまで、がれきの撤去や炊き出しなど、経済的な秩序が回復するまでの被災地での緊急避難的な活動は、行政や外部のボランティアによる無償の支援が是とされていました。それに対し、被災者自身を災害復興事業に雇用して金銭的な対価を支払い、経済的な自立を支援する仕組みを作ろうというのがCFWの概要です。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第14回

ボランティアより被災者が働くべき!? 注目を集める復興支援策「キャッシュ・フォー・ワーク」とは?【後編】

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適切な災害支援のバックアップの枠組みとは

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金子良事氏と共に、日本でC
FWの研究を進める永松伸吾氏
が寄稿している「atプラス08」。

荻上 政策的な枠組みの面では、例えば辻元清美が内閣総理大臣補佐官災害ボランティア活動担当になったとき、「一体何をするんだろう?」という疑問がボランティア従事者からも出てきましたね。これだけの被害がある中、地域個別性への対応という面では、草の根的な活動を各人が模索しながらもどんどん進めていかなければならないのですが、果たして国という単位で何をするのだろうか、水差しをするだけなのではないか? という懸念も寄せられたわけです。

 フタを開けてみれば、基本的には積極的な成果はよくわからず、ひとまず「邪魔されなくてよかったね」という話になっているわけですが、ボランティアにせよCFWにせよ、それに対して国政ができることは少ない。しかし、号令や指揮は難しくとも、後方支援や制度支援はしっかりやるべきで、その点での課題を踏まえた上で前進すべきでしょう。

金子 僕も中央政府には「余計なことをしてくれるな」と思っているので、その意味では何もしないのは歓迎です。むしろ、後追いで地方の動きをバックアップすることが必要じゃないかと思いますね。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第13回

青少年健全育成条例改正問題に見る都政の機能不全【後編】

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自主規制に引きこもらず、さらなる議論と発信を

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『非実在青少年〈規制反対〉読本』

荻上 「本当は」多面的な住民益、を可視化することこそ政治の役割ですからね。例えば今年11年は、ペット販売のルールを定める通称「動物愛護法」の見直しが予定されています。同法をめぐる議論上では、無責任な飼い主から動物たちを守ろうという目的意識の下、ペットショップでの深夜販売の禁止や売りに出す月齢の制限といった規制が、動物愛護団体などの後押しで進められています。もちろん、批判を受けるペット業界側としては、業界の自助努力への評価を求めながら規制そのものは最小化したいという思惑もあります。しかし「ペットの廃棄を減らす」「ペットの殺処分件数を減らす」「悪質なブリーダーを締めだす」といったような目的は合致しているため、産業側も「何がなんでも規制反対」というわけでもない。

 動物愛護法をめぐるブリーフィングシートや議事録などを見ると、具体的議題が存在すること、そして「対立する双方が定期的に話し合う場所を10数年持ち続けていること」の意味を考えさせられます。少なくとも取材をしてみると、マンガ規制条例よりも一歩進んでいるという気持ちにさせられた。マンガ規制条例の場合、僕らも尊敬する年長ロビイストの顔ぶれが数十年前から変わっていないこともまた、僕ら世代の反省点です。長期的なロビイングをもって、応答の場を創り上げていれば、違った展開がありえたのかもしれません。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第13回

青少年健全育成条例改正問題に見る都政の機能不全【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「改正都条例下で出版人は プレイヤーとして厚顔になれ」

ゲスト/兼光ダニエル真[翻訳家]

 今月のゲストは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』などの翻訳や文化考証を手掛ける翻訳家の兼光ダニエル真氏。同氏は2010年夏から始まった東京都青少年健全育成条例改正問題に関して、海外向けの事情説明資料を作成したり、民主党集会に参加するなど、積極的な反対活動を行ってきた。石原慎太郎都知事が4選目を決めた今、あらためて同問題をめぐる議論のあり方や、出版業界の姿勢を問う。

荻上 去る4月10日の統一地方選で、石原慎太郎都知事が再選されました。これまでの石原都政に対する評価が多角的に必要なのは当然ですが、特に2010年に改正された、マンガ、アニメの性表現を狙い撃ちにした青少年健全育成条例の問題点は、サイゾーでも繰り返し取り上げています。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第12回

福祉から無視され続ける社会的弱者としての売春少女たち【前編】

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若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「就学期間中に社会へ包摂し、売春に落ちる子を救い出す」

ゲスト/鈴木大介[ルポライター]

──今月のゲストは、裏社会の住人たちを中心に、ディープな"現場"での取材を続けるルポライターの鈴木大介氏。大メディアでは取りあげられることのほとんどない、路上に生きる女性たちによる"売春"という問題をテーマに据えて、同じく売春の量的調査を進めるチキさんと、がっぷり四つで論じてもらいました。

荻上 この連載では前々回、自殺の問題を取り上げました。昨今、自殺、ホームレス、ネットカフェ難民、失業による貧困化といった問題を、いかに社会的に解決していくのか、ということがようやくテーマに挙げられるようになっています。それ自体は前進であるものの、こうした問題は、その多くを「男性」が占めるものであり、社会問題化のジェンダーギャップがあるのもまた事実です。では、女性の場合、同種の問題がどこに表れているか。そのひとつに、昨今ではなかなか語られることのない、(風俗系ではない)「売春」の問題があります。典型的なケースでいえば、貧困、厳しい家庭環境、教育からの排除などを背景に、仕事も得られず、加えて精神疾患などを併発している女性が一定のボリュームで存在している。そうした女性が、政策的なケアを受けられず、社会的包摂から外れていった挙げ句、風俗産業の外にある売春行為に陥っていくというルートが存在しています。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第12回

福祉から無視され続ける社会的弱者としての売春少女たち【後編】

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現代の「路上障害者」の問題と、どう向き合うか

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『出会い系のシングルマザーたち』

荻上 路上生活者の中には、「路上障害者」とも呼ぶべき人が一定数含まれていますね。かつてであれば、傷痍軍人など身体障害者の方が路上でお金を求める、という風景がありました。一方で最近では、より外からは見えにくい障害を抱えている方が放置されているようにも思えます。かつての「戦争」という共通原因によって大量に生まれてきた路上生活者の場合、そうした人々をどう救うかというのが政治的なテーマになり得たけれど、それ以降ホームレスが数値的に減少しているといっても、事態が改善されているとも言い難い。

 女性の場合は特に、「路上」に身を置くのが、より困難でもある。だからこそ、可視化されにくい問題群を抱えた女性が、より可視化されにくい「出会い系売春」へと流れて、「自己責任」と位置付けられて放置されるという状況があるわけです。

鈴木 そうですね。ただ、彼女たちが福祉と全く接点がなかったかというと、一度は必ずあったはずだと思うんですよ。婦人保護施設の職員さんなどの話を聞いてみたところ、多くの場合"点"では接触しているんですよね。ただ、体を売ればお金になることを知ってしまうと、どうしても路上から抜け出せなくなる。本当にどうしようもなくなって婦人保護施設に来たり、そこを利用して子どもを産んだりするけれど、すぐに子どもを捨ててまた路上に戻っていく。あるときは加害者、あるときは被害者にもなる、本当に理解し難い障害者だということなんですね。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第11回

内定取り消しにブラック企業......若年雇用問題の解決に必要な"公共"の精神とは!?【前編】

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若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「個人化された労働者が会社と交渉できるシステムを作れ!」

ゲスト/坂倉昇平[NPO法人POSSE理事]
     川村遼平[NPO法人POSSE事務局長]

──今回のゲストは、若年層の労働問題の解決・支援に取り組むNPO法人・POSSEの理事・坂倉昇平氏と、同事務局長の川村遼平氏。若者の労働をめぐる状況は悪化の一途をたどっているように見える。この状況を脱するために奮闘するお2人に話を聞いた。

荻上 今回は、若者の労働問題に取り組まれているNPO法人POSSEから、事務局長の川村遼平さんと、広報ミニコミ「POSSE」編集長の坂倉昇平さんをお招きしました。

 大きな雇用情勢の流れを見るに、リーマンショックで底をついて以降、世界的には緩やかな回復傾向にある中で、日本は一進一退を繰り返しながらも、なかなか長期不況を脱しきれていない状況です。直近では、全世代的に多少の雇用改善が見られたものの、15~24歳の完全失業率はむしろ上昇、季節調整後の数値は11.1%にも達しています。これはかつて就職氷河期といわれた十数年前よりもさらに悪い。卒業年度の景気は生涯賃金にまで影響を与えるため、これからさらに「失われた世代」が生まれ続けてしまうということです。こうした現状がある中で、まずはPOSSEの活動を立ち上げられた経緯と、問題への取り組みのスタンスをお聞かせ願えますか?

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第11回

内定取り消しにブラック企業......若年雇用問題の解決に必要な"公共"の精神とは!?【後編】

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【前編はこちら】

問題を個人化させずに、いかに解決フェーズに導くか

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『POSSE vol.10 〈シューカツ〉は、終わらない?』

荻上 お2人は、「解雇規制の緩和」によって労働市場の流動性を高めること、「再チャレンジを容易にするセーフティネットの整備」によってその際の痛みを緩和する、という議論についてはどう思われますか?

坂倉 現在盛んに議論されている解雇規制緩和論は、労働現場の実情を軽視したものばかりです。セーフティネットはもちろん必要です。しかし、セーフティネットがあれば積極的な退職ができて、ブラック企業が淘汰されるというよくある提案は、前述のような、若者が容易には声を上げられない実態からすると楽観的すぎます。こうした議論は、職場の理不尽に対して個々人がひとりで合理的に判断し、行動することができるはずだという「強い個人」モデルに依拠しているのではないでしょうか。それだけでは、結局「できない自分が悪い」という問題の個人化につながりかねない。

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