荻上チキの新世代リノベーション作戦会議
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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 [最終回]

善意が煽る不安に踊らされるな! 「正しく怖がる」ために報道すべき"リスク"とは?【後編】

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荻上 リスクというのは常にグラデュアル(段階的)なものですからね。

 ただ、非専門家にしてみれば、いちいち日常の中でリスク判断を個別にして生きるのは効率が悪い。「ゼロリスク神話」を持たなくても、「とりあえずの二元論」で行動する人は多いでしょう。そんな中で、世間で推進力を得やすいのは、圧倒的に「不安に寄り添う」派です。震災後、僕も多くの流言を検証し、リスクをめぐる議論に参加してきましたが、つくづく、「間違いを正す」という態度・行為だけでは不十分だと思わされました。情報が不足している中で皆が飛びついた情報を否定するだけでは、絶望感ばかりを与えるし、擬似的な対立軸も強化する。「こっちのほうが有効だよ」「よかったら、これを活用して」と、別の選択肢を魅力的に示せるところまでやらなければ。

石戸 その反省は僕も感じます。「放射能を正しく測定しよう」と呼びかけるガイガーカウンターミーティングというイベントを通じて市民測定の意義を考える記事を書いたり、あり得そうもない放射能対策を報じたりしましたが、力不足でした。

 それと、放射性物質のリスクに関する議論では「正しく怖れよう」という言い方が大きなキーワードになりましたが、これは問題点も含んでいたかもしれません。これは論者の立場によって真逆の方向性で使われていて、危険性を重視する立場の人は「なんでお前ら怖がってないの?」という意味で発しているし、逆の立場の人では「なんでそんなに怖がるの?」という意味になる。そんな両者が「自分たちのほうこそがわかっている、科学的である」と言い張るための「正しさ競争」の方便にしかならなかった印象を、多くの人は抱いてしまったんじゃないかなと。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 [最終回]

善意が煽る不安に踊らされるな! 「正しく怖がる」ために報道すべき"リスク"とは?【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

■今回の提言
「リスク報道の役割を果たす為 科学的思考の共有を目指せ」

ゲスト/石戸諭[毎日新聞記者]

近年、ホメオパシーなどのニセ科学問題を中心に科学報道のあり方が論じられていたが、震災以降、原発問題を引き金に、その炎は一気に燃え上がった。こうした状況下で最も有効であるはずの「リスク報道」は機能したのか? 本連載最終回となる今回は、毎日新聞記者・石戸諭氏を招き、これまでのリスク報道の蓄積の成果と、メディアに携わる者が目指すべき地点を探る。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第19回

農水省が農業改革の邪魔をする! 震災被害とTPPに揺れる日本の農業の今【後編】

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日本の農家を再生させる「農地自由化5カ条」

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浅川芳裕氏の著書『日本の農業が必ず
復活する45の理由』
(文藝春秋)。

荻上 突き詰めると、旧態依然として変えがたい農水省が邪魔をして......という無力感の漂う話に、どうしても行き着いてしまいますね。そこからポジティブな転換をするためにはどうしたらいいかという話をしていきたいんですが、浅川さんはご著書『日本の農業が必ず復活する45の理由』(文藝春秋)で、「農地自由化5カ条」を提言されています。その概要をあらためて教えてください。

浅川 はい。第1条が、「米、麦、大豆といった特定作物の優遇措置の撤廃」です。今は儲からなくて自給率の低い作物を支援する仕組みになっているわけですが、これでは赤字作物を作れば作るほど国が支援するので、一向に経営改善のインセンティブが働かない。そうではなく、作物によらず毎月一反につき1万円程度の一律保障に切り替えます。そして毎年5%くらいずつ減らしていって、10~20年くらいでなくしていく。

 これに合わせて第2条では、「減反面積を毎年一定割合ずつ減らす」。第1条の帰結として、自動的にそういうことになりますね。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第19回

農水省が農業改革の邪魔をする! 震災被害とTPPに揺れる日本の農業の今【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「農家が少数派の今こそ提示する『農地自由化5カ条』」

ゲスト/浅川芳裕[「農業経営者」副編集長]

 震災被害にTPPと、日本の農業を取り巻く状況が議論の俎上にあがる機会が増えている。こうした議論は「農家を守れ」という主張ばかりに席巻され続けてきたが、今回のゲスト・浅川芳裕氏は「実は、日本の農業は弱くなどない」と主張してきた。でははたして、これからの日本の農業は、農水省はどう変わるべきなのか? 具体策に踏み込んで考えた。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第18回

「ウィキリークス」と「2ちゃんねる」の共通点とは!? 集合知の"正しき"扱い方【後編】

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荻上 そもそも「集合知」という概念自体が、いまだ整理されていないと思います。多くの場合、「集合知」といえば、「皆が少しずつ力を合わせれば、大きな力になる」とイメージするでしょう。こうした「加算的な集合知」、つまり『ドラゴンボール』の元気玉のような集合知は、投票や署名、ツイッターやFacebookでの拡散の一部には当てはまるものです。ですが、実際にしばしば見受けられるのは、「確率論的な集合知」。アニメ『東のエデン』テレビ版ラストにあった、「2万人もいれば、ひとりくらいはいいアイデアを出してくれるだろう」といったようなケースですね。専門性が高かったりしてアクセサビリティの低い課題についても、母集団の分母を大きくすれば、その課題を解決してくれる人にリーチできる確率がそれだけ高まるだろうという方法です。実はWikiLeaksはこれに近い。皆で少しずつリークしているという話ではなくて、世界中に何百何千万とWikiLeaksの支持者がいるならば、その中でひとりくらいは米国防総省の中の人とかにリーチするだろう、という(笑)。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第18回

「ウィキリークス」と「2ちゃんねる」の共通点とは!? 集合知の"正しき"扱い方【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

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■今回の提言
「技術と思想の両輪でウィキリークス後の社会を構想せよ」

ゲスト/塚越健司[社会哲学者]


 07年の公開以来、全世界において注目を集め続けてきたWikiLeaks。しかしここ日本では、いまいち議論も盛り上がらず、主宰者ジュリアン・アサンジのセックススキャンダルが話題になったくらいという印象である。日本での、リークサイト誕生の可能性はあるのか? 今後のWikiLeaksはどうなってゆくのか? 気鋭の社会哲学者と、「リークサイトのある社会」を考える。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第17回

『震災以降も「原子力ムラ」は何も変わっていない』 原発と共に生きる人たちの現実【後編】

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真に弱者の立場に立った「神話」をいかに作るか

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開沼博氏の著書『「フクシマ」論』

荻上 なるほど。今の対立図式なら、「わかった、まずは検査をし、実態を把握しよう」というのが通常の科学事実に基づいた合意形成のための議論だと思うんですが、そうではなく、ある種の同調圧力みたいなものが議論を席巻してしまっていると。それが「安全寄り」になるか「危険寄り」になるかは、各自のバイアスや、偶発的なカスケードの性質によってしまう。しかし、そうした立ち位置の相互監視になるような状況でも、耳障りの悪い情報の発信を控えない「応答する科学者」の姿は尊敬に値しますし応援しますが、著書で苦言を呈されていた知識人のコミットメントの「その後」のあり方については、どう思われますか?

開沼 『「フクシマ」論』の補章で、森鴎外の「かのように」という言葉を出しました。これは要するに、近代が、あたかも天皇を神である「かのように」扱う、というような「あえて作る神話」を前提にしつつ成立してきたことを示す言葉といえるでしょう。そのような、いわば「前近代の残余」ともいえるものに支えられた構造が、戦後ないしポスト近代などといわれる時代にも繰り返し立ち現れていて、先ほどの例のように3・11後もまさに現在進行形で「かのように」が形成されている。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第17回

『震災以降も「原子力ムラ」は何も変わっていない』 原発と共に生きる人たちの現実【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

■今月の提言
「脱原発議論が捕促しない地元のリアリティを見よ」

ゲスト/開沼博[社会学者]

 原発事故から半年がたった。「脱原発」をぶち上げた菅首相は退陣、新首相が誕生したが、反原発・嫌原発の空気は続いている。放射能汚染についても日々情報が錯綜している状況だ。日本のエネルギー対策は、そして「原子力ムラ」はどうなっていくのか? 本誌8月号にも登場した開沼博氏に、『「フクシマ」論』のその後を聞く。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第16回

「死」の匂いをメディアが排除する! 被災地でジャーナリストが見た軍事的リアリズム【前編】

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──若手専門家による、半熟社会をアップデートする戦略提言

■今月の提言
「政治も今後の安保論議も 自衛隊が持つ現実性に学べ!」

ゲスト/田上順唯[フリージャーナリスト]

 1954年の創設以来、数々の議論を呼んできた自衛隊。東日本大震災では、救援活動や原発事故への対応などをめぐり、活躍がクローズアップされた。これを機に、彼らを取り巻く状況や議論の争点も変わってゆくだろう。自衛隊への密着取材を続けてきたジャーナリスト・田上順唯氏と、そうした動きの内実と今後の展開を考える。

荻上 本連載ではここ2回、東日本大震災に関連するテーマとして、被災地での復興支援や医療に関する問題を取り上げました。それらの課題に加えて、被災地での救助活動などを通じてあらためてクローズアップされているのが、なんといっても自衛隊という存在です。

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荻上チキの新世代リノベーション作戦会議 第16回

「死」の匂いをメディアが排除する! 被災地でジャーナリストが見た軍事的リアリズム【後編】

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徹底したリアリズムで危険を見積もる軍事組織

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『東日本大震災 自衛隊もう1つの最前線』

荻上 そこで注意が必要だと思うのは、有事に備えることは大事でも、過剰適応した形でシステムの組み替えを急ぐことが、平時における不合理を肯定する危険性です。耐震問題や津波問題と同様、どのような問題であっても、コストとリスクを計算して対応していくしかない。

 しかし自衛隊については、災害派遣でのイメージアップや被災地支援へのニーズを口実にして、つまりは「自衛隊さんありがとう」的な「感謝先行型」の議論で、右派はなし崩し的な軍備増強や憲法改正へ、左派は軍事機能を捨てて国際災害救助隊への特化といった方向に議論を持っていこうとする災害便乗型の議論も見受けられます。

田上 どちらもナンセンスですね。自分自身は、長い目では自衛隊はきちんと国防軍として位置づけていくべきだと考えていますが、極端から極端に振れがちなヒステリックな今の政局状況下で、一部の保守勢力が自分たちのロマンや権益拡大のために火事場泥棒的に行うような形では、今ここにある危機に対応できる現実的な体制にはならないと思います。災害救助隊への特化という意見も、平時のコストを考えていない点で非現実的。左翼による自衛隊批判の論理は「起こる可能性の低い有事のために、無駄な行政支出を強いている」というものが多かったですが、それこそ千年に一度、万年に一度の災害のために365日彼らを維持して訓練させていろという話になります。

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映画でわかるアメリカがわかる
町山智浩の
映画でわかるアメリカがわかる
『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』

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批評のブルーオーシャン
『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』

“超”現代哲学講座
哲学者・萱野稔人の
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『国家、権力、そして暴力とは何か?知的実践による解説。』


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