現代用語の『応用』知識
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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第10回

ヌルいちょうちん記事を書いて、糊口をしのぐ物書き「御用ライター」

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 突然だが、この連載は今回で最終回だ。でも安心してほしい。単に、キーワードを考えるのが面倒になったので、フリーお題のコラムに切り替えるだけだ。今までこの連載に腹を立ててきた皆さんの自意識にとって、これからもどんどん都合の悪いことを書いていく予定だ。そもそも、カルチャー関係のメディア業界というのは非常に市場規模が小さく、かかわっている人間も少ない。そのためすぐにムラ社会化し、派閥争いも激しい。そこでは、特定の人脈の開く飲み会やイベントに顔を出して、実力者のゴキゲンを取った人間がかわいがられて「出世」する。サークルの「エラい人」の批判はせず、彼らの褒めている作品も褒める。そしてファンダムの最大公約数的な見解を示して、そのメンタリティを肯定してあげる。そうやって「空気を読む」人間が生き残っていくのが、この世界なのだ。僕もよく「もっと空気を読め」と言われる。数年前に先輩ライターから「お前は●●●●(有名なアニメ系御用ライター氏)みたいになりたくないのか」と説教されたこともある。もちろん「なりたくない」と答えたが。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第9回

ネオリベ自己啓発系女子「カツマー」 VS 彼女たちを妬むヒガミ系女子「カヤマー」

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 勝間和代と香山リカの論争が話題を呼んでいる。経済評論家の勝間和代が最近立て続けに出版している「向上」を説く人生指南本に、精神科医の香山リカが噛み付いて論争になったのだ。そして僕は最近、なぜかこの「カツマ・カヤマ問題」についてコメントを求められることが多い。

 最初に断っておくが、僕は勝間氏や香山氏の本の内容それ自体にそれほど興味は持てない。斎藤環氏をはじめ、さまざまな論者が指摘するように、強気な状態にある人が勝間本を読んでエネルギー源にし、弱気な人が香山本を読んで安心する。ただそれだけの話で、ふたりの対立は擬似問題でしかない。幸せのかたちは人ぞれぞれ。努力で幸せになれるとは限らないが、努力したほうがその確率は上がる......という「常識」を確認するだけで、このふたりの論争はほぼ決着がつく。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第8回

「コンテンツ派」VS「アーキテクチャ派」

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 先日、久しぶりに格ゲー(『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の最新作)をやった。相手は友人の情報環境研究者・濱野智史(29)。弱かった。っていうか弱すぎた。彼の後輩の生貝君が応援に駆けつけて、後半はそれぞれの持ちキャラで僕に対抗してきたが、この僕の前ではまったく無力だった。......なんて書くと、僕が90年代に鳴らした格ゲージャンキーのように聞こえてしまうかもしれないが、そんなことはない。確かに10代後半の頃は結構入れ込んでいたが、いわゆる「ゲーマー」には程遠い。単に、濱野が弱かったのだ。そしてその一連の戦い──僕の15連勝の記録は多くの「思想地図」ファン、若い批評ファンによってツイッターを用いて「中継」(「tsudaる」という)されていた。なぜそんなことになったのか? この格ゲー対決は、事前に僕らがツイッターで呼びかけた「思想地図」第4号発刊イベントだったからだ。僕が編集協力で参加した同誌は、なんと発売日に即・増刷。思想誌としては異例の売り上げを見せて、今ではもう1万5000部を超えている。その大好評を記念して、僕らは突発的にオフ会を開いたのだ。「これから渋谷のゲーセンで宇野と濱野が格ゲー対決します」──。まったく、我ながらふざけた話だ。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第7回

09年最後を締めくくる!"『応用』知識"特別版「ゼロ年代」

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 ゼロ年代、と呼ばれた10年が終わる。国内カルチャーにとってこの10年は、古いものがどんどん無効化され、新しいものが次々と勃興していった時代だった。たとえば、90年代のサブカルチャーは某出版社が象徴するように、もう少しアングラ感のあるものだった。『完全自殺マニュアル』「クイック・ジャパン」『スキゾ/パラノ・エヴァンゲリオン』。どれも当時私が夢中になって読みふけった本だ。氷川竜介『20年目のザンボット3』は、永遠のバイブルのひとつだ。ところが私見では、こうしたカルチャーの存在感はゼロ年代に入ってガタ落ちする。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第6回

カルチャー目シブヤ科ジイシキ属「サブカル守旧派」

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「サブカル」という言葉が苦手だ。もちろん「サブカルチャー」の略語としての「サブカル」じゃない。90年代前半の(広義の)渋谷系サブカルチャー的「自意識」を指す「固有名詞」としての「サブカル」だ。理由はひとつ。「『サブカル』守旧派」ともいうべき中高年業界人たちが、明確に「老害」として現代のカルチャーシーンを腐らせているからだ。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第5回

ナンパ目カルチャー科ロハス属「森ガールハンター」

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「森ガール」という言葉がある。ゆるゆるワンピースに、ニットのモコモコした帽子をかぶり、首からはいつもトイカメラを下げていて日常生活の何げないワンシーンをパシャリ。つまるところ、ぷち文化系&スローライフ系に走っている割には恋愛方面にコンプレックスが少なく、わりかし乗り気なイマドキの女子が軟着陸しそうなキャラクター、といったところだ。なんで「森」ガールなのかというと、その外見がなんとなく「森にいそうな」感じの女の子だからだ(『ハチミツとクローバー』のはぐみを想像してもらいたい)。よって、森ガールは決して森には生息していない。彼女たちが生息しているのはむしろ、中央線沿線のぷちオシャレカフェや雑貨店だったり、写真や音楽などの表現難民系イベントだったりする。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第4回

ダンカイ目オヤジマッチョ科ムッツリ属「ハルキ中年」

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 知人にKさんという人がいる。フリーの編集者で小説家志望。某文芸誌新人賞の最終選考に残ったこともある実力派で、私も何度か投稿前の作品を見せてもらって意見を述べたことがある。いずれもなかなかの出来で、そう遠くない未来に作家としてデビューしそうな逸材でもある。そんなKさんと先日久しぶりに会ったら、げっそりとやつれていた。「どうしたんですか?」と尋ねると、どうも請け負ったムックの仕事がうまくいっていないようだった。彼が編集していた某社の『1Q84』ムックが、校了間際で全面作り直し、発売も1カ月近く延びてしまったというのだ。一体なんでそんなことに? 尋ねると、Kさんは生気のない声で話し始めた。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第3回

OL目オチャクミ科マケイヌ属「ドリカム症候群」

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 先日、ある音楽誌の仕事で、「ドリカム」について対談した。あまり思い入れがないアーティストだったけれど、アルバムをまとめて聴き返してみると面白く、対談も大いに盛り上がった。そこで気になったのが、今ドリカムを聴き返すと、吉田美和の歌詞というのは、当時は気づかなかった生々しいリアリティに溢れていることだ。「忘れないで」(91年)あたりが典型例だが、とにかく初期は不倫ソングが多い。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第2回

リーマン目ムノー科シャカイハガンオタ属「自信のない35歳団塊ジュニア症候群」

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 昔、友人の先輩で、ちょっと苦手な人がいた。彼(仮にAさんとしておこう)は37歳独身の会社員。ガンダムや平野耕太のマンガが大好きなオタク中年だ。ミリオタ(軍事オタク)でもあり、サバイバル・ゲームのチームにもう10年以上参加し続けている。そのせいか妙にマッチョなキャラ売りで、日々の会話で何かと「不道徳なこと」や「社会の不正」に必要以上に憤ってみせるところがあり、周囲からは煙たがられていた記憶がある。

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宇野常寛の「現代用語の『応用』知識」第1回

ヘテロマッチョ類ルサンチマン科ブログ論壇に多数生息「弱めの肉食系」

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 何年か前の話だが、私の先輩が所属するサークルで、ちょっとしたストーカー騒ぎがあった。彼らは江戸川区を中心に活動する、フットサルのサークルだった。そこにMさんという40歳くらいの独身中年男性がいた。彼の職業はマッサージ師で、いつもニコニコ、まるでお地蔵さんのような笑顔を絶やさない人だった。私はその1年ほど前に一度だけ会ったことがあったが、そんな彼が当時少しはやっていたあるポルノゲームの大ファンだと知ったときは、結構驚いたものだ。

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映画でわかるアメリカがわかる
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『映画を通してズイズイっと見えてくる、超大国の真の姿。』

“超”現代哲学講座
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『国家、権力、そして暴力とは何か?知的実践による解説。』

宇野常寛の批評
宇野常寛の
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『さらば、既得権益はびこるレッドオーシャン化した批評界!』


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